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94.2月号 週刊東洋経済
■特集/安易な進出はやけどの元 -中国巨大市場の現実-
日本の産業界では対中投資熱が高まっているが、ブームだけで進出できるほど中国は甘くない。中国が社会主義経済から市場主義へと急ピッチで転換しつつある今、日本企業にも将来を見据えた経営戦略が必要だ。
日本企業の中国投資は、いまや一大ブームの様相を呈している。プラザ合意後の海外展開の一服や日本国内の不況などにより、日本からの海外直接投資はここ数年停滞しているが、対中投資だけは順調な伸びを示している。そうしたなかで、埼玉県で精密自動プレス金型の設計・製造会社を営むY社長は、日本企業の安易な海外進出に警鐘を鳴らす。それは、六~七年前の円高のとき、海外展開して“大やけど”を負った多くの企業を見てきたからだ。とりわけ、中国へと雪崩を打って進出する製造業を、Y社長は「流行病」と断じた。
(注:Y社長とは山本勝弘氏)
前述のY社長とて、中国の持つポテンシャリティを否定はしない。同氏が強調するのは、安易に中国進出するのではなく、「足元を固めろ」ということだ。Y社長の会社は''87年から、中国・上海交通大学からの研修生受け入れをスタートさせている。当時は同大学から二人の研修生を受け入れ、同社固有の金型技術のほか、プレス技術の技術指導を施した。その後も交流を続け、''89年には同大学内に「国際金型技術交流センター」を開設している。
現在は、同社が1,000万円を投じて四年制の「金型専門科」を設け、優秀な成績を修めた卒業生を日本に招き、技術研修を施している。''93年には、北京にも同様の技術交流センターを開設した。「中国版マイスター制度」とみずから言うように、Y社長は金型の“匠の技”を中国の弟子たちに移転することから姶めようとしている。
Y社長は、「町工場の海外進出」についても独自の構想を抱く。それは、協同組合による進出だ。中国の理工系大学卒業者を対象に、協同組合員15社 ×2人=30人の技術者を各企業で育成し、それらをベースに10年後には中国に拠点を設けようという計画である。集団化事業で工業団地を建設し、各企業の持つ人脈や情報を活用して、リスク分散を図るのが狙いだ。
単に「ブーム」だけで進出するには、中国は多くのリスクを抱えている。それは、大企業とて例外ではない。
最終更新日:2010-08-30
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