第3回 『史上最年少ノーベル賞受賞者』と日本の人手不足

 

 今年のノーベル平和賞に選ばれたのはお二人で、一人はパキスタン人のマララ・ユスフザイさん(17歳)、もう一人はインド人の人権活動家、カイラシュ・サティヤルティ氏(60歳)です。マララさんには、史上最年少のノーベル賞受賞者、そして15歳の時にイスラム原理主義勢力タリバンから銃撃を受け、意識不明の重体になったなど劇場的な話題で注目が集まりました。しかし、私たちのような経営者は、サティヤルティさんに共感を覚えるのです。

 彼は6歳の時、同じ年頃の靴磨きの子どもが学校に通っていないことが不思議で、貧しさと教育、そして平等と公平について疑問を持つようになりました。長じて大学院で高電圧工学を学び、将来が約束されたエリートコースを捨て、児童労働根絶に関わり、30数年の間に8万人あまりの子どもを奴隷状態から救い出し、職能をつけ社会に送り出したとして栄えある受賞となりました。しかし、マララさんの受賞スピーチはインターネットや新聞にほぼもれなく出ていましたが、サティヤルティさんの受賞スピーチはほとんど見ることが出来ません。おっちゃんはニュース性がないということですね。

 私は、サティヤルティ氏の日本版が出てくることを願っています。日本は人手不足だと言いますが、とんでもない話で、本当はものすごく余っているのです。障害者でも高齢者でもなく、就職活動もせず、したがって失業者でもない人たち。社会と関係性が持てず、苦しんでいる人が私たちの周りに実にたくさんいます。

 2010年の統計ですが、
   1.ニート(就学・就労せず、求職活動もしない人)15歳~34歳 63万人
   2.ひきこもり(対人・社会関係を結ぶことの困難な人)15歳~39歳 70万人
   3.孤立無業者(在学中を除く未婚無業者の内ずっと一人か家族以外に交流の無い人)20~59歳 162万人(人口の1.3%)

 私の住む愛知県一宮市にも、ニートとひきこもりの方だけで2千数百名住んでいます。みなさんの町にもたくさんいます。途上国にも、先進国日本にも、違った形ではありますが、苦しんでいる若者は溢れかえっています。来たれ、現れよ、日本版サティヤルティさん。

(執筆者:株式会社アバンセコーポレーション 林隆春

 

 
 

画像:駐日ノルウェー王国大使館ホームページより
写真: (Kailash Satyarthi) Senado Federal. (Flickr)
 

 

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