8.設備改善の進め方 設備のあるべき姿について

今までの講座では、既に設置されているラインに対して、あまりお金を掛けないで『人や機械の動きで、時間が経過したとき付加価値を生まないムダな動作を徹底的に取る』ことで、生産現場の改善・改革を進める方法について述べてきました。

今回は改善の成果を更に高めるために、設備改善についてまとめてみました。

8-1.設備のあるべき姿について

生産現場には、新製品への生産対応や増産、合理化のための新しい設備が次々に設置されますが、設備発注時の仕様の良し悪しがその後の生産性に大きく影響します。

新設された設備の仕様が悪いために、それの改善に多大な費用や時間を取られては生産革新活動どころではありません。こうならないために設備導入に際しての『設備のあるべき姿』について考えてみることが大切です。

8-2.作業改善から設備改善へ

今まで述べてきた徹底的ムダ取りによる作業改善をやり尽くしてから、設備改善に入ることが大切です。その理由として

8-3.手作業の自動化

工程自動化の第1歩は人の仕事と機械の仕事を分離することです。機械にやらせる仕事は何か、本当に人にしかできない仕事は何かを考え直すことから自動化を考えます。

EMIDAS登録企業の所有工作機械では台数の多いのがマシニングセンター次いでNC旋盤とのことですが、先ずパレットチェンジャーの付いていないマシニングセンターについての作業を考えてみますと

等々が考えられます。

上記の手作業(赤字)のあるべき姿

No.作業内容あるべき姿
1ワーク取付け取付治具にワークを放り込むような感じでセット出来るよう構造を見直す。特に位置決めは楽に入るようラフガイド付きにする。基準ピン2本を使うときは1本はダイヤカットする。
2クランプボルト締めは極力止め、最悪でも1回回すだけとする。出来れば油圧やエアクランプとする。市販のクサビ、カム、トッグルクランプなどの活用も考える。
3ドアの開閉手作業でのドアの開閉は止め、局所カバーにするか、またはエアシリンダーにより開閉する。加工完了で自動的に開くようにする。
4起動起動ボタンは次工程に行くとき逆動作にならない位置に付ける。パレチェン付きのマシニングで数歩歩かないとスイッチが押せないのが、あるがその場で押せるようにする。歩きながらの「ながらスイッチ」も検討する。
5加工完了表示加工完了の表示灯には音声を併用する。多台持ちの場合、加工完了が判らないで機械が停止していることが多々ある。
6アンクランプ加工完了後の元位置復帰で、ワークのクランプは自動で弛むようにする。
7ワーク取りだしアンクランプ後、自動でワークをハネ出す。
8治具清掃ワークハネ出し後、自動で治具を洗浄する。
9ワークの切粉除去ワークを置けば自動で切粉除去の出来る1個流しの小型のエアブローや洗浄装置を設置する。工程間搬送装置にこれらを付加しても良い。
10測定ワンタッチゲージ、多点測定器、エア、電気マイクロの使用。
11工程間搬送ラインの場合、取り置きのムダや床面の汚れを無くすために、工程間シュートなどを設置する。

オートローダーの付いていないNC旋盤作業も上記と殆ど同じですし、加工機全般に共通していることかと思います。
これらの緑字で表示された付加価値を生まない手作業をいかにチエを出し合い、ローコストで自動化し、人手作業から開放することが出来るかで、企業の競争力に格差が出ると思います。皆さんの工場のレベルはこれ以上ですか。

手作業の自動化に付いては、対象部品のライフサイクルや設計変更の有無など十分検討して取りかかるとともに、その自動化により、どれだけ生産性が上がるのか、または人が減るのかを試算して見て下さい。自動化により作業は楽になったが手待ちが増えただけでは困りものです。

手作業の自動化については、下記の書籍が参考になるかと思います。

日刊工業新聞社発行 武田仁著 「工場を自動化する30ステップ」

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