第14回 共和発条 株式会社

( 初出:日刊工業新聞社「プレス技術」 第37巻 第12号 (1999年12月号) )

執筆者 内原康雄

共和発条(株)茨城工場は茨城県北茨城市中郷工業団地内にある。
薄板バネと線バネを主生産品目とし、材厚0,02mm~0,5mmのバネ材の加工を得意とする。主得意先は松下通信工業で通信機関連の部品製造を行っている。特に薄板と絶縁シールおよび両面シールとの接着加工には定評がある。
生産設備は縦型、及び横型フォーミング・マシンから精密プレス機、および金型用工作機械が中心である。
今回は、金型製作、生産管理、インターネット利用の話を中心に聞いた。

表1 会社概要
共和発条 株式会社
代表者代表取締役 新村 輝雄
創立1961年(昭和36年)12月1日
所在地 本社
横浜市港北区樽町2-10-5 
TEL(045)531-0887
茨城工場
茨城県北茨城市中郷町日棚字宝壷644-46 
TEL(0293)43-5891
資本金1,000万円
従業員数70名
営業品目通信機器、自動車関連弱電部品の精密薄板ばねおよび精密線バネ
主要設備順送プレス、コイリングマシン、トーションマシン、スプリングマシン、テンションスプリングマシン、旋盤、フライス、成形研磨機、平面研磨機、ワイヤーカット、放電加工機、タッピングマシン、スポット溶接機、洗浄機ほか

金型設計・製作システム

共和発条の金型製作は治工具、自動機の製作を含めて5名で行われている。金型用の工作機械は三菱電機のワイヤカット放電加工機を3台を中心にしている。
CAD/CAMの主機はEXCESS(コンピューター・エンジニアリング)である。

金型の内省化率は約5割であるが、社内で組立用の自動機や治工具も製作している。一部にQDCのシステムを利用している。ここでの特色は社内で機構設計、金型設計、製品設計を多様に行っている点である。

生産管理システム

98年5月に生産管理システムを一新した。本社工場及び、茨城工場にそれぞれサーバーを1台づつ設置している。本社は7台のクライアント。茨城工場は3台のクライアント。

電話回線で得意先とも連動している。情報としては受注管理、生産管理(製品在庫、仕掛かり在庫)、製造手配書、伝票発行を行っている。このシステムを利用することのメリットを小沢工場長は次のように語る。
「まず、本社と茨城工場のパイプが深くなりました。どの製品がいくつ出来ているのか?リアルタイムにわかります。当日の出荷情報もわかります。パソコンで管理するようになってだいぶ、手間が省かれました。それでも製造現場ではトラブル発生はしょっちゅうです。例えば、最近では全体の4割が特急品です。月3回くらいの発注書に対して、4割が特急品ですから、毎日、毎日修正が必要です。通常流れている製品アイテムが400種類、部品総数で1200種類、これをコンピューターで管理することでかなり、時間の節約等、ミスの減少ができました」

このシステムの製作費はハード、ソフト込みで1,500万円。以前のオフコンではフロッピーディスクでデータの交換をしていたので郵送で一日かかっていた。よってリードタイムは短くなった。それによるメリットは顧客に対する納期短縮であろう。

共和発条株式会社システム構成図

インターネット及び通信環境の利用

共和発条のネットワーク環境を推進するのは新村専務である。

インターネットの利用
  • 電子メールを通じての本社、工場間の情報交換
  • 図面データ(CADデータ)の送受信
  • 経営情報、文書、検査データ等のメール
パソコン通信による専用回線の利用
  • 得意先からの発注指示、納期回答、出荷情報、検収情報
  • 本社から工場への生産指示と工場から本社への出荷指示

近い将来には経理情報等もネットワークを通じて行う予定である。

ネットワークの利用について新村専務は「電子メールを使うようになってから本社と工場間の連携がスムーズに流れるようになりました。これまでだと電話、 FAX、郵便が通信の手段でしたが、電子メールでは毎日、正確な報告が届くようになりました。口では話づらいことも、電子メールだと本音が言えるようになったようです」と語る。

「現在は幹部、営業のみの利用ですが、将来的には各セクションの責任者にも電子メール環境を整える予定です。これにより業務がよりスムーズに流れることを予測してます」

ここのところ急速にメールを社内の報告業務に利用している工場が増えている。

共和発条においても実験を含めながら確実に情報化を推進しいてるようである。

まとめ

共和発条の茨城工場は急速にデジタル化に対応している。今後もCAD/CAMおよび金型の製作システム、あるいは社内のメーリング・リスト等が課題としている。
筆者が最近、感じるのは急激なスピードで展開する情報化についていく企業が利益を出し、成長するのではないか?ということである。共和発条においてもメールやインターネットを通じての情報収集や情報交換を盛んに行うようになった。
特に携帯電話関連の部品を製造する工場なので、情報化に対する意識はかなり高いと感じた。しかし新村専務は「いつまでも携帯電話が売れるとは限りません。すばやく動ける小さくても強い組織をつくりたい」と語る。
今後の共和発条の発展を期待したい。

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