第23回 株式会社 勝和技研

(初出:日刊工業新聞社「プレス技術」 第39巻 第4号 (2001年4月号))

執筆者 内原康雄

岡山市近郊にある勝和技研は、レーザー加工専業のメーカーである。社員数34名、売上高5億円。その製品群は、0.5mm~10mm程度の鉄、SUS材の加工が中心で、加工内容としてはCO2(炭酸ガスレーザー)、YAGレーザー(固体レーザー)を用い、CO2のレーザーの波長が1/10なのでセラミックの穴あけ、鉄の斜めの穴あけ、微細溶接、微細加工、真空上の溶接などを得意としている。顧客先は700社にも上るという。
勝和技研の歴史はまだ浅く、1986(昭和61)年にスタートした。その当時、レーザー加工技術を他社で学んだ小野常務が、社長と共同でレーザー加工の専業メーカーを立ち上げたのだ。小野雅夫常務は創業メンバーの一人でもある。

レーザー加工専門のジョブショップ

なぜ?レーザー専業なんですか?板金とか、ベンダーとかはやらないんですか?
という問いに対して小野常務は、
「レーザーから始めたので、ベンダーなどの技術が追いつかなかったのが正直なところです。レーザーに関してはプロですが、ほかは素人だっとので得意分野だけに絞りました。いやァ、一時期は付加価値のある板金と思ってやりましたが、結果的にはダメでしたね」と語る。
そういった意味では、レーザー加工のジョブショップに徹することでさまざまなレーザー技術に特化している工場である。レーザー加工の品質と納期を武器に95年には大阪にも進出にした。
「当時、(近所にある)他社はどんどん西に行きました。でも弊社は同じことをやるようではダメだと思い、逆に関西方面に工場を出したわけです。結果的には成功でしたね」
岡山の本社工場と大阪工場の製作区分も明確で、
岡山:鉄(0,05~6mm)、SUS(0,05~12mm)大阪:鉄(4,5~16mm)、SUS(6mm)社員構成は、以下のように陣容になっている。レーザー加工機オペレーターは、岡山が7名で大阪は3名、CADスタッフは岡山6名、大阪3名、営業は大阪6名、岡山4名。

ジョブショップ・勝和技研のレーザー加工技術

1. 半導体レーザー
半導体(LD)レーザーの応用は低価格化、高出力化、長寿命化により、産業機械化において信頼のおける光源として利用されている。
2. YAGレーザー
YAGレーザーは、固体レーザーとして波長が短く調整が容易なため、微細加工に利用されている。最近では大パワーのCW発振の6KW以上が自動車のボディー溶接などに広く使われるようになった。
3. エキシマレーザー
高出力エキシマレーザーによる基盤配線のビアホールの高速加工に主として使用されている。ガルバノスキャンミラーを駆使し、高速加工ができる。
4. CO2レーザー
20年以上の歴史があるCO2レーザーは、中小企業において切断用としてかなりポピュラーな存在である。

勝和技研のIT化

勝和技研の生産管理システムは、NCコードのO番号で製品を振り分けている。5,000アイテムが1カ月で流れていくそうである。そのための基盤システムは、CAD/CAMおよび生産管理システム、レーザー加工機の合理的な連携である。
CAD/CAMはAuto-CAD-LT、独自CAM(小池システム)、マザックSMARTシステム(3次元板金展開)などを利用している。接続された各システムにより、勝和技研の加工のリードタイムは最短で1日である。
「e-mailでデータでいただき、素材に在庫があれば、翌日には発送できます」と小野常務。
最近は、インターネットを通じての受注も急増しているそうだ。

エヌシーネットワークを通じての受注

東京の油圧機器メーカー:10万程度
金沢の銅鋳物鋳物メーカー:5~6万程度
岩手のスプリンクラーのメーカー:5~6万程度
山口のイリコなどのメーカー:全部で20件以上……
ということである。
小野常務は、インターネット営業について今後も積極的に展開していくそうである。
「先日、H(自動車メーカー)の研究所から開発品の依頼がありました。SUSのパイプ0,5mmの肉厚に0,1mmのスリットを入れてくれというものです。試行錯誤した結果は0,12mm。結果的はダメでしたけど、非常にいい経験となりました」
と語る。
この経験から、「サンプルを提供するものが勝ち」という持論を得たそうだ。
(筆者もエヌシーネットワークのアドレスを彫っていただいた)
スピーディということが勝和技研の特徴の一つである。
与信に関しては帝国データ、商工リサーチをインターネットで利用している。金額の大きいところからは、現金で受注しているとのこと。

まとめ

毎回、本稿において製造業のさまざまなジョブショップを見せていただいている。その折り感じている、それぞれ個性を強く出しているのが日本の製造業の強みであるということを、改めて認識した次第である。勝和技研の今後の活躍に期待したい。

会社概要
株式会社 勝和技研
創立1986年
代表者社長 中西 省三
資本金1,000万円
所在地〒700-0953 岡山県岡山市西市117-8
TEL(086)244-1994 FAX(086)244-4251
従業員30名
売上高4億円
主要業務精密レーザーカット、YAGレーザー加工、トムソン刃用スチールダイ
主なレーザー加工設備
型式テーブルサイズ(mm)特徴
2,500W1,500×3,000無酸素カットSS16トン
2,000W1,500×3,000SUS12トン安定加工
1,000W1,219×2,438精密切断・薄板加工
1,000W1,219×2,438薄板高速加工
YAGレーザー450×600×300基板,セラミック
2,000W1,500×3,000SS材厚板加工
500W1,219×2,000薄板微細加工

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