3-4 曲げによる問題点

(1) 最小曲げ高さ

前述のU曲げ型形式において、曲げダイのRにブランクが掛かっているとダイRによってブランクが横方向にげることとなり曲がらない。

曲げダイRは板厚の3倍以上が理想とするとブランクは曲げパンチから4倍Tとなり展開伸びを1/2Tとすると、最小曲げ高さは3.5倍Tとなる。

(2) 低い曲げによる変形

上記最小曲げ高さ以下の曲げ高さは下図のように変形し易い。

これは材料中立軸内側の圧縮応力が曲げ高さ方向の材料肉が少ないため曲げ高さ方向に逃げることにより発生する。

(3) 曲げ側面の出っ張り

曲げ加工により被加工材は幅方向に曲げ部が若干膨らむ方向に変形する。
つまり、曲げ巾の根本寸法がプラスに変化する。
これは(2)項と同様に材料中立軸内側の圧縮応力により被加工材端面に材料肉が逃げるために発生する。

また、ストライキングによる材料肉逃げが発生するので曲げ幅方向の精度を要する場合にはその分ブランクを逃がす等の対策が必要となる。

曲げにより膨らむ量としては金型構造等により異なるがほぼ板厚の15%程度。

(4) 段曲げの内R

通常比較的低い2段の曲げは同時に加工されることが多い。その際、曲げの内側(曲げパンチ側)に若干のRを必要とする。

板厚、段曲げの高さによるR寸法は異なるが、段高さが5mm程度以下で0.2~0.5段高さが5~10mm程度で0.3~1.0。

10mm以上の段高さは2工程で曲げる方が好ましい。

段曲げ同時加工は一般的に段高さ以外の寸法精度は安定し難い。

段曲げのブランクの展開寸法は、板厚が変化するため通常の計算では異なる結果となる。
従って、経験値により求める。

(5) 曲げ近くの穴の変形


曲げ工程(ステージ)前に加工した穴等の近くを曲げる場合、曲げにより引っ張られ穴寸法に変化が発生する。

引っ張られが発生する曲げからの距離及び引っ張られる量は板厚、穴の大きさ及び金型構造により大きく異なる。

穴が引っ張られ大きくなることは結果として曲げ高さ方向の寸法もプラス方向に変化する。

穴寸法及び曲げ高さ寸法の精度を要する場合は曲げ工程(ステージ)後に穴抜き工程を行う。

但し、抜きバリ方向は曲げの外側であること。

→曲げの内側がバリ方向の場合抜きダイの強度が不足し破損することがある。

(6) 曲げによるソリ

曲げ加工において、その圧縮応力、引張応力の反発によりスプリングバックが発生し結果として曲げ直角度に影響するが、同時に被加工材平面度も同様に影響する。

スプリングパッドの押さえ力の調整によりある程度減少する。

曲げる方向と反対側にソリが発生する。

一般的に次工程(ステージ)で修正することが多いが修正により曲げ直角度が変化する可能性があるので注意を要する。

曲げの問題

曲げによるトラブルは、上記の(5)(6)に起因することが多く、これらは長年培われたカンにより解決しているのが現状。計算や金型精度では解決せず、悩みの種となっている。
カンが狂うことも多くプレスの難しさとなる。

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