3-6 順送レイアウト作成手順

(1) ストリップレイアウト概念

単発工程形式においては、工程の長短が部品コストに大きく影響するため工程短縮に注力される。
順送形式は、ステージの長短が使用プレス機に変化がなければ部品コストに影響することは少ないので、レイアウト作成において重視されるのは、

とすることが一般的。

適正なステージ数により、品質安定性と生産性が決まる。

設計変更

最近の製品設計変更は、曲げ追加等の形状が極端に変化する内容が多く金型対応に苦慮。
変更を想定してステージ数を決定するとなるとかなりなムダも発生。
もし、製品設計がある程度変更が想定できればその情報を金型設計に伝えることもムダ防止になり変更対応に有力。

ステージ数

同じ製品を複数の金型メーカーでレイアウトを作成すると、その長さは全く異なる。
製品が複雑になればなるほどレイアウト長さは様々になる。
メーカーにより考え方が異なり、良否の判定は結果(コスト・品質・生産性)によるがレイアウト決定が極めて重要であり、それがそのメーカーの技量ともなる。
金型費がメーカーにより異なる要因でもある。

(2) 生産設備

1-2 プレス機械の種類と用途 及び 2-2 金型形式と選択基準参照

順送生産に使用される自動プレスラインの構成としては、

(3) ストリップレイアウト作成手順

(1)項の概念を基本として一般的に下記手順にてストリップレイアウトを作成する。

1) 送り方向決定・・・・製品をどの方向に送るか決める。

2) カットパンチ形状決め・・・外形をカットする手順を決める。

3) パイロットの径と位置

4) 各ステージ配置・・・・レイアウト決定

5) 金型に対するレイアウトの位置決め。

(4) 具体例

模擬的に製品図からストリップレイアウト完成までのプロセスを下記図にて示す。

1) 左図模擬製品図をもとに製品設計者と打ち合わせを行う。金型製作都合及び精度安定・コスト削減対策の結果を右図に示す。

2) ストリップレイアウト作成上の注意

(5) ストリップレイアウト事例

模擬製品図よりストリップレイアウトの事例を示す。

ストリップレイアウト例データ(参考)
  • 材幅 85mm
  • 送りピッチ 44mm
  • 金型センター   第5ステージの右5mmの位置
  • 抜き圧力 22Ton(せん断抵抗35Kg/mm2)
  • 荷重中心 金型センターに対し X=7.6 Y=3.5
  • 使用機械 自動プレス 80Ton
  • 想定回転数 60SPM
  • 金型交換時間 約0.5時間
  • 材料交換時間 約0.3時間
尚、参考として単発の場合
  • 1案

    1、総抜きバーリング
    2、上曲げ
    3、下段曲げ

    形状を得ることのみを目的とした場合の工程で段曲げ部の穴、右曲げ側面のバーリング位置については展開時寸法決めが困難で量産におけるバラツキに不安を残す。
    また、総抜きでバーリング(下穴同時)を行うと抜きカスが上がり製品に打痕となり易い。

  • 2案(1案の不安点対策工程)

    1、総抜き
    2、バーリング
    3、上曲げ
    4、窓穴抜き
    5、下段曲げ
    6、穴抜き

    精度を得ることを目的とした場合の工程で現実的ではない。
    一般的にはある程度バラツキを想定した工程を組むことが多い。

  • 3案(一般的な工程

    1、総抜き
    2、段曲げバーリング
    3、上曲げ
    4、穴抜き

(6) コスト比較(参考)

順送と単発(前項の3案)のコスト比較を月産5,000台の企画として試算すると概略下表となる。
この試算値は、あくまでもコスト比較の参考値であり実際の価格とは異なる。

   部品コスト
金型形式使用機械金型代材料費加工費
順送80Ton130万円2.793.075.86
1案単発3工程50Ton105万円2.838.3511.18
2案単発6工程50Ton150万円2.8318.2921.12
3案単発4工程50Ton120万円2.8311.6314.46

尚、材料単価は、フープ材(順送用)で 95円/Kg 切り板(単発用)で 101円/Kg として計算。

(7) 送りさん幅と縁さん幅

送りさん

外形抜または順送で順次送りながら製品を抜く場合に製品と製品との間隔を設ける。
その間隔のスクラップとなる部分を送りさん(または、さん)と呼ぶ。
その送りさんの幅は板厚の1.5倍以上が好ましい。
但し、金型強度や構造を考慮すると2~3倍以上となることがある。
送りさんを設けず製品の間隔をあけないで加工するスクラップレスと云う方法もあるが製品のバリが同一方向にならず、製品精度は送り精度に影響される。

縁さん

送りさんのX方向に対し縁さんはY方向を示す。縁さん幅は送りさん幅の1.2倍以上とする。
但し材料を機械的に送る場合に縁さんの強度不足により送りミスが発生するので注意を要する。

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