第3回 経営セーフティ共済-資金調達

取引先の倒産による連鎖倒産防止のため、共済金の貸し付けを受けることができる制度です。経営セーフティ共済とは、中小企業倒産防止共済制度の愛称です。

1. 対象者

1年以上継続して事業を行っている中小企業者。なお、加入者はいつでも自由に共済契約をやめることができます。

2. 支援内容

共済加入後6ヶ月以上経過して取引先企業が倒産(注)した場合、売掛金や受取手形などの回収が困難になった額と、積み立てた掛金の総額の10倍のいずれか少ない額の貸付を受けることができます。ただし、貸付上限額は3,200万円までとなっています。

(注)倒産とは
① 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始または特別清算開始のいずれかの申し立てがなされた場合
② 手形交換所に参加する金融機関で取引停止処分を受けた場合(いわゆる、手形不渡りの場合)を指し、「夜逃げ」、「内整理」等は含まれませんので、ご留意下さい。

3. 掛金について

(ア) 毎月の掛金
掛金の月額は5,000円から80,000円の範囲内において5,000円刻みで設定でき、加入後増額が可能です。減額には一定の要件が必要となります。

(イ) 掛金総額
掛金の総額は、320万円が上限です。掛金月額の40倍に達した場合には掛金の掛け止めも可能です。

(ウ) 税法上のメリット
毎年の掛金は、税法上損金(法人の場合)又は必要経費(個人の場合)に算入できます。ただし個人事業の場合には事業所得の場合にのみ必要経費に算入できますので、注意が必要です。

4. 貸付内容

(ア) 対象者
共済に加入後6ヶ月を経過した後に取引先が倒産し、売掛債権及び前渡金返還請求権について回収困難となった事業者です。なお、貸付の請求期間は、倒産発生日から6ヶ月以内です。
(注)
売掛債権・・・・・・・商品を販売し、その後に代金を受け取る場合の権利。いわゆる販売先からお金を回収できる権利
前渡金返還請求権・・・商品を仕入れるために予め支払った仕入代金。仕入先が倒産し、商品を納入されない場合には、通常、返金が要求できる。いわゆる仕入先からお金を回収できる権利

(イ) 貸付条件
 無担保・無保証人です。返済期間は、6ヶ月間据え置きの5年間での貸付元本毎月均等返済となります。金利は無利子ですが、貸付を受けた共済金の10分の1に相当する掛金が掛金総額から控除されます。

(ウ) 貸付額
① 回収困難となった売掛債権又は前渡金返還請求権
② 掛金総額の10倍
のいずれか少ない額。

<具体的事例①>
掛金総額100万円の共済加入者が、取引先の倒産にあい、売掛債権1,500万円の回収が困難になった場合
① 1,500万円
② 100万円×10倍=1,000万円
①1,500万円>②1,000万円より、1,000万円が貸付の上限。1,000万円借り入れた場合、掛金総額が0円に戻ります。

<具体的事例②>
掛金総額320万円の共済加入者が、取引先の倒産にあい、売掛債権2,000万円の回収が困難になった場合
① 2,000万円
② 320万円×10倍=3,200万円
①2,000万円<②3,200万円より、2,000万円が貸付の上限。2,000万円借り入れた場合、掛金総額は、320万円-2,000万円×1/10=120万円に減少します。

5. 貸付ができない場合

以下の場合、貸付を受けられないのでご注意下さい。
 取引先が「夜逃げ」、「内整理」の場合。いわゆる法的整理ではない場合において債権回収が困難な場合。
 取引先の倒産発生日が、共済契約成立の日から6ヶ月未満の場合。
 取引先の倒産発生日までに6ヶ月分の掛金を払っていない場合。
 共済金の貸付請求が、取引先の倒産発生日から6ヶ月を経過した後にされた場合。
 契約者が貸付請求時点で中小企業者でない場合。
 50万円又は、契約者の月間の総取引額の20%に相当する額のいずれか少ない額に達していない場合。
 契約者が貸付請求時点に自ら倒産又は、これに準ずる事態にある場合。
 契約者がすでに貸付を受けた共済金の返済を怠っている場合。
 売掛債権の発生又は回収が困難になったことについて、契約者に悪意もしくは重大な過失があった場合。

6. 問い合わせ先

中小企業基盤整備機構共済相談室 電話:050-5541-7171
URL:http//www.smrj.go.jp
全国の金融機関の本・支店
最寄りの商工会・商工会議所
都道府県中小企業団体中央会

執筆者紹介
大井 宏明(おおいひろあき)

株式会社ルーキー
代表取締役社長

公認会計士。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年から監査法人トーマツにてベンチャー企業の株式公開支援業務、法定監査業務、その他各種コンサルティング業務に従事。2005年末に監査法人トーマツ退社後、2006年初から上場準備企業の取締役CFOに就任し、上場準備業務の統括責任者となる。2008年株式会社ルーキーを設立、代表取締役社長に就任。経営戦略立案や社内体制整備等の各種コンサルティング業務を実施している。
株式会社ルーキーホームページ:http://rookie-japan.com

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