特集:微細加工

ファナックが目指す超精密加工とは

 

ファナック株式会社 代表取締役会長兼CEO 稲葉 善治氏

微細加工業会 設立記念講演
「ファナックの超精密加工機 ロボナノの最新機種について」より

ナノ加工の必要性とは。

ファナック株式会社

昨今、ITだけでなく自動車関連市場においても、超精密加工の必要性が増しています。特に、光学レンズ系では加工精度の高精度化と加工面品位の高品位化が共に重要です。また、超精密加工機の両市場への適用には、高精度加工・高品位の安定性が不可欠であるため、当社では、安定性を重視した0.1nm(100pm)指令の同時5軸超精密加工機をご紹介しています。

機械加工によるナノ加工の対象サイズ とは。

ナノメートル(nm)とは10-9メートルで、1マイ クロメートルの1000分の1です。

FANUC ROBONANOが主なターゲットとしている加工対象精度は、 ナノ~マイクロのもので、加工方法はオーソドックスな切削などです。水素原子の大きさが、約0.1nm(100pm)ですから、ナノレベルの機械加工とは、まさに刃物よって原子レベルで掻きだす加工技術になります。

また、半導体技術に比べて、シャープエッジや滑らかな曲面を作ることができ、さまざまな材質を加工可能です。一般的な機械加工ではワーク表面の面粗さを向上させるために磨きが必要になりますが、ナノ加工では切削だけで鏡面が可能で、同時に微細凹凸も表現できます。

どのような分野が適用市場となりますか。

まずレンズ形状、溝形状、自由曲面やアレイといったレンズ系の加工では、すでになくてはならない技術となっています。そして、今後潜在需要が大きいと期待されるのが、自動車や一般金型、光導波路、半導体、時計・装飾用途、医療・バイオ関係です。自動車では、HUDやランプなどの高精度化で需要が増大しています。また、半導体などはMEMS技術からの置き換えがあるでしょう。

最新機種の特徴を教えてください。

ファナック株式会社

当社の開発方針は、「市場のニーズに答えた、量産に適用できる超精密加工機の開発」です。「壊れない、壊れる前に知らせる、壊れてもすぐ直せる」機械であり、①量産に適用できる超精密加工機の開発、②安定した加工精度、加工面品位の実現、③信頼性、保守性、予防保全の追求を柱としています。

加工性能としては、0.1nm(100pm)指令で、超高精度機上計測と安定加工を実現。また高い稼働率と操作性と段取りの負担を軽減し、使いやすさを追求しています。

「α-NMiA」シリーズは、5軸マシニング機と3軸旋盤機の2機種構成です。5軸マシニング機は、自動車市場向けの光学部品金型や時計部品加工に適しており、3軸旋盤機は、旋盤機能に特化し、IT市場向けのレンズ金型に適しています。性能の要は軸受にあります。直線軸、割出軸には高い剛性と減衰性を備えた油静圧軸受を採用し、高速回転軸には温度上昇を抑える空気静圧軸受を採用することによって、従来機に比べ剛性・減衰性が向上しました。

また、最新のCNCとHRV4+などサーボ技術を適用し、0. 1nm(100pm)の指令、制御を実現しています。そして保守性向上のために、スケール交換時間を短縮するなどの工夫も行なっています。

今後、目指す方向性を教えてください。

自動車関連の超精密金型では、A4サイズのヘッドアップディスプレイ(HUD)金型の加工が可能になりました。時計関連部品の超精密加工では、腕時計部品(ホログラム)の加工や時計筐体(ブリリアントカット)の加工。また、スマートフォンカバーや名刺カードケースは、ロボナノで金型を加工し、当社の電動射出成形機ロボショットで精密成形を行うことで可能となりました。

同時5軸のナノ加工機により、極めて高い加工精度と加工面品位を実現しました。今後は加工精度や加工面品位の更なる向上とその安定性の実現のため、地道に課題を解決するとともに、ロボット、AI、IoTとの融合機能の開発を強化し、ロボナノの安定加工を実現していきます。

ファナック株式会社

所在地

山梨県忍野村

社員数

8,623人(グループ全社員)

年商

7,266億円

URL

www.fanuc.co.jp/

 

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