特集:微細加工

小径工具で加工の限界点に挑戦し続ける

日進工具株式会社

日進工具株式会社 代表取締役社長 後藤 弘治氏

世界一細い工具で微細加工をリードする。
市場の拡大に後押しされ、2017年には東証一部上場を果たした。
その躍進の原動力とは。

バブル崩壊が転機

「小径工具に特化したからには、世界一小さなものを作らなければならない。それは意地でもあり、やるからには、当然成し遂げるべき目標でもありました」と、社長の後藤氏は言う。

小径工具の常識を打ち破ってきた同社だ が、小径工具に大きくシフトしたのはバブル崩壊後のことだ。1954年の創業以来、エンドミルで高度成長期の製造業界を支え、「メイド・ イン・ジャパン」の金型を削り出してきた。し かしバブル崩壊ののち製造業各社が赤字転落する中で、同社も経営方針の再考に直面せざるをえなくなった。そして選択したのが小径工具だった。

太い工具ほど素材の原材料はかかるし、機械も大きなものが必要になる。大手工具メーカーとの価格競争もあり、商品の原価を整理してみると利益率もさほど高くない。また1990年初頭には、ちょうどいろいろなものが小型化しはじめた時代でもあった。しかしまだ市場は小さい。だから、大手工具メーカーの参入は、 当面はないだろうと読んだ。

こうして思い切って小径工具に特化し、1993年に第1期工事が完成した仙台工場は、拡張を重ね小径工具用に絞った設備を導入し続けていった。

世界の常識を大きく超えた「小径」

日進工具株式会社

ここ10年で小径工具のマーケットは2倍になったが、最初の10年間は、試作目的以外ではほとんど売れなかったという。工具であるからには、ロットで100本は作ることができるように標準化しなければならない。「こんなに小さいもの、何に使えるの?」と言われ、数量的な需要がなくても、常に量産体制を整え、ラインナップは揃えておいた。

ある展示会では、ドイツ人に「桁が間違ってるぞ」と指摘されたこともあった。世界的な小径工具の常識は0.1mmだったため、髪の毛に文字を彫ることができる0.01mmの工具に、腰を抜かすほど驚かれた。

日進工具株式会社

刃直径0.01mmともなると、現在使いこなせる人も多くはないが、こうした数字が目にとまることによって、顧客は当然その上のサイズ の工具もあることを知り、技術的な可能性が広がったことに気づくことができる。「工具が 加工の限界点です。そして、いまは使えなくても次第にそれが標準となっていく。だから、みなさんが必要になる前に作っておくんです」と後藤氏は語る。やがて15年くらい経てば、それを当たり前のように使うようになる。しかしニーズができてから開発を始めるのでは手遅れなのだ。

日本の強みを発揮できる微細加工

工具が進化するには、工具を作るための機械も進むことが必要だ。また、専用の取り出し装置や、電子顕微鏡などの周辺装置も一緒に発展しなければならない。しかし工具は、あくまでも道具なので、コストに合うものであることが重要だ。こうして初めて微細加工のプレイヤーが増えて、当たり前の技術となり、医療技術の向上など世界中の人がその恩恵を享受できるようになる。

「微細加工やナノの領域になると、検査も難しくなってくる。だからこそ、ここが作っているものだから大丈夫という信用が重要になる。これまでの蓄積が問われるようになると思います」と、後藤氏は言う。

日本人が得意とする細かい作業や、正直さという美点が発揮できる分野こそが微細加工であり、ここに日本の強みがある。

微細加工工業会への期待

「新しい技術を探している企業は世界中にあります。そのためには海外の展示会に工業会として出展し、知ってもらうことは重要だと思います。また、展示会で名刺交換しただけではビジネスに繋がらないので、各社ひとりは簡単な英語での一次受けをできるスタッフが必要になるでしょう。こうした変化が必要とされる時期が来たのだと思います」

日進工具株式会社

所在地

〒140-0014 東京都品川区大井1-28-1 住友不動産大井町駅前ビル6F

TEL

03-3774-2459

URL

https://www.ns-tool.com/

エミダス会員番号

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