特集:微細加工

メイド・イン・ジャパンの信頼を支える加工技術

ナカヤマ精密株式会社

ナカヤマ精密株式会社 代表取締役社長 中山 愼一氏

日本でのものづくりにこだわることで、高品質と従業員の生活を守り、ものづくりの原点を大切にする。

メイド・イン・ジャパンへのこだわり

「日本人が、日本国内で家庭を養い、安定したささやかな生活を送るために必要なのが企業。そして、ものづくりを続けないと企業の成長はない」と中山氏は語る。中山氏本人も、身の回りで使うものには極力「メイド・イン・ジャパン」を選ぶ。

企業によっては、開発だけ国内に残し、生産を海外に移すところもあるが、同社の場合は、あくまでも開発と生産を日本国内におき、近い距離で問題点の洗い出しと解決を行い、ものづくりの原点に徹した姿勢を大切にしている。

しかし、同社は過去に、大阪の本社工場を閉め、熊本に工場を集中させるという決断を余儀なくされたこともあった。その際には大坂で雇い止めも発生したが、もう二度とそうしたことは行わないという強い決意のもと、リーマンショック後には社員全員で協力し、1人も欠けることなく危機を乗り切ることができた。やがて増産の時期になった時、同社は人員削減をせず優秀な職人が残っていたため、一気に増産体制にシフトすることができ、他社に一歩抜きん出ることができたという。こうした経験を踏まえ、中山氏は、「企業は人が資本」と語る。設備だけ残っても、使う人がいなければ、よいものは生まれないからだ。

装置メーカーと作り上げる工作機械

ナカヤマ精密株式会社

微細加工領域だけではなく、ナノ領域の設備も有し、総合的な設備力と優れた品質で日本の技術力を牽引する同社だが、新入社員は入社後1週間、まず第一歩として、やすりがけを経験する。機械で加工すればすぐに終わるようなものだが、あえて水平や直角を手で削り出す。これは「現代の名工」に選ばれ、黄綬褒章を受章した顧問の三津家氏による「道場」で、ものづくりの原点を経験してもらうことにより各人の心構えを整えると同時に、会社側もそれぞれの個性を知り配属先を決めていく。この道場には社員だけではなく、高校の先生なども体験に訪れるという。

一方、新規に工作機械を導入するときには、あえて初期バージョンを入れ、メーカーと一緒に仕上げていくという。例えば、フルストロークだと端の方がミクロン単位でずれていることもあるし、スピンドルの伸びも使ってみないとわからないことがある。まず機械を空転し安定させて、±3μmの真ん中のゼロを目指してあわせていく。

このように装置メーカーからも頼られる高い技術力をもとに、同社では超精密金型の設計から製造、そして検査装置の組み立てまでを一貫して行う点で顧客の信頼を得ており、半導体用の部品では、月に1万点以上が動くという。現在は家電や自動車関連のものが多いが、人工透析用マイクロ流路の治工具なども製造を行うようになり、今後は医療機器や航空機の部品も増やしていく予定だ。

限界を超える挑戦と一番上を目指して

ナカヤマ精密株式会社

実は、中山氏は自身でも自家用ジェット機のパイロットである。「くまもとフライトクラブ」の理事長も勤め、熊本工場を訪れた人に、空の旅を楽しんでもらうこともある。アクロバット飛行まで行う腕前で、限界を超えたときにどうリカバリーするかという分析と判断は、工作機械との付き合い方と同じだという。機械の限界を超えたら刃物がどうなるか、何がどこまでできるのかを知るには、限界に挑戦することが重要なのだ。

またこのクラブでは、水害で一度水没した飛行機をばらして整備し、再び大空に飛び立てるようにしたこともあるという。この試みは日本では前例がなく、国交省の許可を取るのも大変だったが、ものづくりを愛するチーム全員で楽しんだそうだ。

今後の目標は、工場内をなるべく自動化し、人間の仕事は「機械+α」のα部分に特化して、他社ができない一番上を目指していきたいという。「自分たちの生活を楽しむために、少しばかりのお金と、それを生み出す仕事が必要」と、人が主体の人生観を貫いていく。

微細加工工業会への期待

「新規顧客の開拓など、自社だけでは難しい点について、工業会の枠組みを使って、協力し合えたらいいと思います。自社の技術的な強みを伸ばすための取り組みは、引き続き個社単位で行うべき点も多いですが、自社が得意としない部分を共有しあっていけるような工業会に育っていくとよいと思います」

ナカヤマ精密株式会社

所在地

〒532-0004 大阪市淀川区西宮原2-7-38 新大阪西浦ビル801号

TEL

06-4807-1500

URL

http://www.nakayama-pre.co.jp

エミダス会員番号

72895

 

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