特集:微細加工

ミクロン単位の超精密加工の極みを追求

有限会社米山金型製作所

有限会社米山金型製作所
代表取締役社長 村松 善太郎氏

金型製作で培ったノウハウをもとに、高難度の精密加工に挑戦を続けるその技術力の源泉とは。

先見の明で微細加工に特化

1986年の創業以来、初代社長米山照章氏のもと、高品質な金型を供給してきた同社は、装置メーカーと協業しながらAWC(オートワークチェンジャー)搭載の工作機械を導入し、工場の自動化や24時間連続稼働もいち早く実現するなど、常に最先端の技術に取り組み、顧客の信頼を得てきた。

しかし、米山氏の急逝により大きな転換期を迎え、2006年以降、より高度な技術が必要とされる微細加工の分野へと特化することになった。この舵取りを進めたのが現社長の村松氏である。その慧眼によって、以来、従業員数30名以下の規模ながら、主要取引先に一部上場の大手メーカーが名を連ねる金型メーカーとなった。

同社が微細加工を始めた当初は、まだ「微細加工」自体が知られていなかった。そのため、まずは自分たちで1年あたり10回を超える展示会に出展し、技術を知ってもらうことから始める必要があったという。もちろん設備も先行投資となった。しかし、同社にしかできない技術を有することによって、その後の価格や納期の競争と一線を画し、自社の強みを追求することができた。

設備や工具の特性を知り、使いこなす

有限会社米山金型製作所

同社が得意とするのは、マイクロニードルマスター型やマイクロ流路金型、鏡面切削加工や微細凹凸加工で、切削加工機とワイヤー放電加工機を用い、常に±1μmの精度を追求している。マイクロ流路は、十数年前から注目し研究開発を進めているが、まだ試作がメインで金型は必要とされていない。しかし、「技術的に難しいものだからこそ、いまやっておく。いまできるようになっておくことで、量産が始まった段階で他社よりも一歩先に行くことができる」と、村松氏は語る。

工作機械は、東芝機械のUVM-450Dや碌々産業のAndroidを使用しており、3軸の加工機がメインだが、それは現在の5軸加工機は同社が求める精度を出せるほどには、振動を抑制できないためだ。そして、なんといっても工具の発展が、微細加工を牽引してくれた。同社に蓄積された経験、装置設備、工具が三位一体となり、はじめて目覚ましい進化を遂げることができたと、村松氏は振り返る。

装置の個性を把握するのはもちろん、工具の特性も正しく理解し、自分たちで段取りをすることによって、初めてミクロンの最高峰を目指すことができる。装置納品後に、自分たちが求めるレベルにスピンドルを調整するために1か月かけることも普通だという。機械だけ入れても同社と同じ品質を生み出すことは不可能なのだ。

私たち全員が技術の恩恵を受けるために

有限会社米山金型製作所

現在、同社の設備には、ナノレベルの加工を行う超精密加工機はない。しかし、微細加工機の限界に挑戦することによって、ナノレベルと微細レベルの距離を縮め、限りなく超精密加工に近づける努力を続けている。例えば同社が得意とする照明系の金型の場合、超精密加工機であれば加工はできるが、それでは非常に高価なものになってしまう。顧客が求めるスピードやコストに合わせ、それをエンドユーザーが用いる製品に繋げていくには、微細加工を極めることが必要不可欠なのだ。

もちろん同社の工場内は常に23℃に保たれ、できる限りの環境は整えられている。しかし、地震や雷といった自然災害や、近くをトラックが通るなどの不可抗力は心配の種だ。農業ほどではないにせよ、最後は天候にまで気を配らなければならないというのが微細加工の領域なのである。

微細加工工業会への期待

「工業会に期待していることは、横のつながりが生まれ、情報が入ってくるようになることです。また、顧客から相談を受けた時に、自分のところでは受けられないような加工であっても、それをお互いに繋ぐことができたら、もっといろいろなところで微細加工の技術が生かされる未来が来るのではないかと期待しています」

有限会社米山金型製作所

所在地

〒399-3304 長野県下伊那郡松川町大島402-12

TEL

0265-36-5476

URL

http://y-mold.com

エミダス会員番号

79478

 

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