第6回 セーフティネット保証制度-資金調達

災害や取引金融機関の破綻等により、経営の安定に支障を生じている中小企業について、一般の保証枠とは別枠で保証を行う制度です。

1. 制度の概要

セーフティネット保証制度の対象は、中小企業信用保険法第2条第4項に8項目列挙されています。

(ア) 連鎖倒産防止(1号)
民事再生手続開始の申し立てを行った大型倒産事業者に対し、売掛金債権等を有していることにより資金繰りに支援が生じている中小企業者を支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
 大型倒産事業者に対して50万円以上売掛金債権等を有している中小企業者
 大型倒産事業者に対して50万円未満の売掛金債券投資か有していないが、当該事業者との取引規模が20%以上である中小企業者
② 対象となる大型倒産事業者
対象となる大型倒産事業者は、中小企業庁のHPで指定事業者リストとして掲載されています。
中小企業庁HP:http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefe_net_1gou.htm

(イ) 取引先企業のリストラ等の事業活動の制限(2号)
生産量の縮小、販売量の縮小、店舗の閉鎖などの事業活動の制限を行っている事業者と直接的・間接的に取引を行っていること等により売上等が減少している中小企業者を支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
 対象事業者と直接的あるいは間接的な取引を行っており、当該事業者に対する取引依存度が20%以上で、当該事業活動の制限を受けた後の3ヶ月間の売上高等が前年同期比マイナス20%以上の見込みである中小企業者
 対象事業者の近隣に事業所を有しており、当該事業活動の制限を受けた後の3ヶ月間の売上高等が前年同期比マイナス20%以上の見込みである中小企業者
なお、平成14年3月より、20%以上→10%以上に条件が緩和されています。
② 対象となる事業者
対象となる事業者は、中小企業庁のHPで指定事業者リストとして掲載されています。平成21年7月末現在において、対象となる事業者はありません。
中小企業庁HP:http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefe_net_2gou.htm

(ウ) 突発的災害(事故等)(3号)
 突発的災害(事故等)の発生に起因して売上高が減少している中小企業者を支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
指定地域内において、1年間以上継続して事業を行っており、災害等の影響を受けた後の3ヶ月間の売上高等が前年同期比マイナス20%以上の見込みである中小企業者

(エ) 突発的災害(自然災害等)(4号)
突発的災害(自然災害等)の発生に起因して売上高が減少している中小企業者を支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
指定地域内において、1年間以上継続して事業を行っており、災害等の影響を受けた後の3ヶ月間の売上高等が前年同期比マイナス20%以上の見込みである中小企業者
② 対象となる災害
対象となる災害は、中小企業庁のHPで指定案件として掲載されています。
中小企業庁HP:http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefe_net_4gou.htm

(オ) 業況の悪化している業種(全国的)(5号)
 全国的に業況の悪化している業種に属する中小企業者を支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
 指定業種に属する事業を行っており、最近3ヶ月間の平均売上高等が前年同期比マイナス3%以上の中小企業者
 指定業種に属する事業を行っており、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上、上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない中小企業者
 指定業種に属する事業を行っており、最近3ヶ月(算出困難な場合は直近決算期)の平均売上総利益率又は平均営業利益率が前年同期比マイナス3%以上の中小企業者
(具体的事例)
 最近3ヶ月の平均売上総利益率が33%で、前年同期比が35%だった場合
 (35%-33%)÷33%=5.7%
  5.7%≧3% → 認定基準クリア
② 対象となる指定業種
対象となる指定業種は、中小企業庁のHPで指定業種リストとして掲載されています。
中小企業庁HP:http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefe_net_5gou.htm

(カ) 取引金融機関の破綻(6号)
 破綻金融機関と金融取引と行っていたことにより、借入の減少等が生じている中小企業者を支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
破綻金融機関と金融取引を行っており、適切かつ健全に事業を営んでいるにもかかわらず、金融取引に支障を来しており、金融取引の正常化を図るため、破綻金融機関等からの借入金の返済を含めた資金調達が必要となっている中小企業者
② 対象となる破綻金融機関
対象となる破綻金融機関は、中小企業庁のHPで破綻金融機関リストとして掲載されています。
中小企業庁HP:http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefe_net_6gou.htm

(キ) 金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整(7号)
 金融機関の支店の削減等による経営の相当程度の合理化により借入れが減少している中小企業者を支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
経営の相当程度の合理化を実施している金融機関に対する取引依存度が10%以上で、当該金融機関から直近の借入残高が前年同期比マイナス10%以上で、金融機関からの直近の総借入残高が前年同期比で減少している中小企業者
② 対象となる金融機関
対象となる金融機関は、中小企業庁のHPで指定金融機関リストとして掲載されています。
中小企業庁HP:http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sefe_net_7gou.htm

(ク) 金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡(8号)
 RCC(整理回収機構)へ貸付債権が譲渡された中小企業者のうち、事業の再生が可能なものを支援するための措置です。
① 支援の対象となる中小企業者
金融機関からの直近の総借入残高が前年同期比で減少し、適切な事業再生計画を作成し、RCCに対する債務について返済条件の変更を受けている中小企業者

2. 支援内容

上記の支援の対象となる中小企業者に対し、保証限度額の別枠化を図る制度です。
① 保証限度額
(一般保証限度額) (別枠保証限度額)
普通保証 2億円 + 普通保証 2億円
無担保保証 8,000万円 無担保保証 8,000万円
② 保証料
おおむね1.0%以下で、信用保証協会ごと及び信用保証制度ごとに定められています。

3. 利用方法

対象者は、本店(個人事業主の場合は主たる事業所)所在地の市町村(または特別区)の商工担当課等の窓口に、対象となる事実を証明する書面等を添付の上、認定申請書2通を提出し、認定を受けた上で、希望の金融機関又は所在地の信用保証協会に認定書を持参の上、保証付融資を申し込むことになります。
金融審査を経た上で、融資及び保証の可否が決定されることとなっています。

4. 問い合わせ先

(社)全国信用保証協会連合会 電話:03-6823-1200
各都道府県等の信用保証協会  http://www.zenshinhoren.or.jp/others/nearest.htm



執筆者紹介
大井 宏明(おおいひろあき)

株式会社ルーキー
代表取締役社長

公認会計士。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年から監査法人トーマツにてベンチャー企業の株式公開支援業務、法定監査業務、その他各種コンサルティング業務に従事。2005年末に監査法人トーマツ退社後、2006年初から上場準備企業の取締役CFOに就任し、上場準備業務の統括責任者となる。2008年株式会社ルーキーを設立、代表取締役社長に就任。経営戦略立案や社内体制整備等の各種コンサルティング業務を実施している。
株式会社ルーキーホームページ:http://rookie-japan.com

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