製造ラインの生産革新活動の展開に当たっては、現場で目にするムダだけを場当たり的に取ったのでは画期的な生産性の向上は望めないし、場合によっては手待ちが発生し、改善結果が成果に結びつかないで効率の悪い改善活動にもなります。
製造現場には、いつでも目にすることのできる「繰返し作業」と、不定期に発生し見過ごされ易い「非繰返し作業」とがあります。
この不定期に発生する「非繰返し作業」には
等々が考えられます。
これらのムダな作業を『総合効率低下の10項目』と呼ぶことにします。
そこで効率良く生産革新活動を推進するためには、部品(製品)1個を造るのに要する人の作業時間である『工数原単位』に着目し、これを構成している『基準時間』と『ライン総合効率』のそれぞれを改善することで、生産性30%~50%は難なく達成できるはずです。
これについては、6-2-3.7)現状・ライン総合効率(稼働率)の確認(式B参照)、8)多台持ちラインのビデオ分析と改善の進め方(式D参照)をもう一度見なおして下さい。
人が主体のラインの場合は
機械が主体のラインの場合は
この式Bでは、分子の『総基準時間』をムダ取りにより出来る限り小さくすると同時に、分母の『ライン総合効率』をより100%に近づけることを並行して行うことで、工数原単位を画期的に削減することが出来ます。
また機械主体のラインでは式Dにより、分子の『基準サイクルタイム』(ネック工程のマシンサイクルタイム)を出来る限り小さくし、分母の『ライン設備総合効率』をより100%に近づける活動をします。
今回はこの『ライン総合効率』の改善の進め方について述べてみたいと思います。
『ライン設備総合効率』の向上も、それを阻害している要因は冒頭に述べた『総合効率低下の10項目』であり、これを改善することで可能だと思います。
IEに関する書籍で目にする「稼働率などの定義」についてまとめてみますと、
ライン化された加工、組立ラインや多台持ちをしている設備では、多品種少量生産の場合が多いかと思います。このような場合の基準時間の設定について説明します。
改善対象ラインの部品(製品)A,B,Cの前月の生産実績数とビデオ分析により求められた基準時間が下表のような場合で考えてみます。
ここで∑基準時間とはライン全体の繰返し作業の要素時間を合計したものです。
品番 | 生産実績数 | ∑基準時間(分/個) | 生産数 × ∑基準時間 |
---|---|---|---|
A | 1,000 | 1.000 | 1,000 |
B | 2,000 | 2.000 | 4,000 |
C | 3,000 | 3.000 | 9,000 |
合計 | 6,000 | ----- | 14,000 |
①まず基準時間の加重平均を求めます。
∑基準時間の加重平均値は
14,000 ÷ 6,000 = 2.333分/個 として求められます。
この平均値は、改善活動により基準時間が削減されたら修正します。
多品種少量生産で全品番の基準時間の把握に時間が掛かる場合は、類似形状別にグループ分けして、その中の代表機種の基準時間を把握し、平均値を求めて下さい。
機械主体のラインの場合も上記と考え方は同じで、部品A,B,Cが1個完成する基準サイクルタイムを調査し、基準サイクルタイムの加重平均を求めます。
②次に工数原単位(マン)を求めます。
例えば改善対象ラインには作業者が二人で、月間の総稼働時間が20,000分で生産実績数が6,000個としますと、工数原単位(マン)は、
20,000 ÷ 6,000 = 3.333分/個 となります。
機械主体の場合は機械の稼働時間には、無人運転時間も加えます。
基準時間と工数原単位が求められたら、『ライン総合効率』を計算します。
ライン総合効率 = 基準時間 ÷ 工数原単位 … 式A
= 2.333 ÷ 3.333 × 100 = 70% となります。
この70%という数値から、このラインには30%の「非繰返し作業」によるムダが有ることが判ります。このムダは冒頭に述べた『ライン総合効率低下の10項目』によるものです。