第16回 湘南デザイン 株式会社

( 初出:日刊工業新聞社「プレス技術」 第38巻 第4号 (2000年4月号) )

執筆者 内原康雄

最近では、図面の3次元化は避けては通れない障壁になってきた感がある。そこで、今回は神奈川県相模原市で主としてプラスチックの試作加工を中心に簡易金型を製作している「(株)湘南デザイン」を訪れた。
「湘南デザイン」は簡易金型を中心に、光造形、真空注形などでさまざまな試作モデルを製作している。主な得意先は、大手弱電メーカーを中心に、海外の自動車メーカーまで多岐に渡っている。
また、「湘南デザイン」を中心に、「湘南デザインシンガポール」「デザインクラブインターナショナル」「湘南デジタルソリューション」「デザインクラブインターナショナル」など、3Dモデルを中心とした多角化を図っている。
今月のデータ作成件数は、受注全体の約3/4がデータ作成からのモノづくりとなっている。ここでは3Dをいかに活用しているかということを中心に、「湘南デザイン」を紹介する。

試作モデル

図面が3次元化されていくと、いかにモデルを精巧につくるかということが主題となってくる。「湘南デザイン」は、コンサルティングを含め、その試作モデルの発信点であるデザインの部分を統括している。
まずメーカーからの出図があるが、ここではデザインを含めて、開発の部分から手伝うことが主流になっているという。試作製作の流れを鎌田課長に伺った。
「弊社ではお客さまの要望により、デザインからお受けする場合もあれば、NCデータ作成の部分を受ける時もあります。これはメーカーさんのニーズを拾っていくことが主ですから……」
顧客本意の要望に沿ってモノづくりをしている姿勢がここでも明らかである。
「湘南デザイン」の主流である簡易金型、真空注形、光造形について鎌田課長に尋ねた。
「弊社のモノづくりの分野では、最近、簡易金型の比率がだいぶ大きくなってきました。やはり、最終形に近い商品であるからだと思います」
モノづくりの流れから言うと、一番簡易に早くできるのが光造形である。「湘南デザイン」ではそれをさらに早く加工するために「テンプレス」という商品も作り上げた。
これはUV硬化シリコンで型を作り、UV硬化ウレタンが試作品となる。携帯電話くらいのものなら、10~20分で出来上がる。また、小ロッド射出成形型ではアルミニウム75%、エポキシ樹脂25%の反転型もある。

独自工法の「Temp-Less」

従来の真空注型とは異なり、型材や製品材にUV硬化樹脂を採用している。

図1

CAD/CAMシステム

「湘南デザイン」のCAD/CAMシステムは、図1のとおりである。総台数50台以上にも及ぶCAD/CAM群がシステム化されている。
ハイエンドクラスの3次元CADは、「CATIA」「Pro/Engeneer」「I-DEAS」「Unigraphics」を中心に、「Solid Works」「Solid Edge」など。3次元CAMは、「MasterCAM」「CAM-TOOL」がある。さらに「MicroCADAM」「I-CAD/MX」を中心とした2次元CADまで揃えており、目を見張るようなシステム構成である。
さらに、最近では流動解析やPDM(Product Design Manufacturing)を含めた形でのシステム構成を目指す方向である。
ここでも問題となるのは、オペレーターの教育だそうだ。鎌田課長自身も「CATIA」歴8年のオペレーター出身だそうだが、「現在の3次元化の流れはともかく速いスピードで進んでいます。これについていくにはオペレーターも1つのCADを覚えるのではなく、モノづくりの流れを全部覚えていく必要があります。そういった意味では、弊社のオペレーターは実際のモノづくりの部分を実際にやってもらってます。自分で画を書いて、自分でつくることを教育してます」
得意先のデータ対応も問題である。世間ではソリッド化ということがこれだけ言われるようになったが、顧客の発注の中での図面形態は2次元が5割、ワイヤーフレームは2割、サーフェスは2割、残る1割程度がソリッドだそうである。
「湘南デザイン」では構想設計の段階から企画に加わることが多いため、設計後工程を考えて、修正を意識したデータ作りが必要だという。

まとめ

3次元データをいかに活用して、モノづくりを進めていくか?という視点で取材をしてみたが、CADというシステムを使い切るにはわれわれ人間のほうの勉強が重要であることをつくづく感じさせてくれた。
「湘南デザイン」グループの1社「デザインクラブインターンショナル」では、「湘南デザイン」設計の実際の自動車も設計・開発した。言うなれば、CADで描いた図面をいかに本物にするか?それがわれわれ製造業の仕事となっていくことは間違いないであろう。

会社概要
湘南デザイン 株式会社
代表者代表取締役社長 松岡 康彦
創業1967年(昭和42年)12月
所在地 本社・工場
〒229-1132 神奈川県相模原市橋本台3-11-10
TEL(042)774-2111 FAX(042)774-2112
資本金5,000万円
主要設備(CAD/CAM/CAEシステム)Unigraphics ,CATIA,I-DEAS,Pro/Engeneer,MasterCAM,Solid Works,SolidDesigner,CAM-TOOL,I-CAD/MX-AD,MicroCADAM OS/2,Micro CADAM DOS,Micro CADAM-X EWS,3D-TIMON,PATRAN-FEM5

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