IT導入事例 その3

食品メーカー

コミュニティサイトをもとに、消費者の声を反映させた(ヒット)商品を開発する。

問題点

N社は主に即席めんを製造する食品メーカーである。マーケティング部門が時代のトレンドに沿い、なおかつN社独自の風味を生かした即席めんを市場に投入している。しかし、思うようなヒット商品はまだ生まれていない。消費者の嗜好が多様化し掴みにくくなっている中、消費者に広く受け入れられる即席めんを開発できないか、と頭を悩ませていた。

解決策

ITキーワード【コミュニティサイト】

N社は既にホームページを開設していたので、それをより有効に活用することを考えた。

全国に存在するラーメン通の人々の活動は非常に活発であり、個人のホームページからラーメンに関する情報を積極的に発信しているという情報を得ていた。

N社は、全国のラーメン通の人々が集えるコミュニティサイトの立ち上げを計画した。コミュニティサイトとは、Webページ上でインターネットを介して、特定の話題について人々が掲示板やチャットを利用して語りあうことのできる場で、その中で交わされるさまざまな意見や感想などを参考に、ヒット商品の開発に成功した。

IT活用のツボ

あくまでラーメン通の人々を主体としたコミュニティづくりに努めることが大切です。ビジネス色を強く出しすぎると参加者が純粋に楽しめなくなり、コミュニティが活発化できない可能性があります。

消費者の生の声を聞くことで、消費者が求めているものをリアルに感じとり、新商品に反映させていくことで、ヒット商品を生む可能性を高めることができます。

コスト評価初期投資
開発費
運営費
売上アップ度 ★★
IT難易度

コンピュータ機器製造

資材調達サイトで部品の発注を入札形式にし、仕入れコストの削減と発注処理のペーパレス化を実現

問題点

U社はコンピュータ機器を製造するメーカーである。
機器製造のために、全国の200以上の部品メーカーと取引している。これらの部品メーカーに対して多種類の部品を発注するのだが、その際に行う発注書作成などの事務処理は非常に煩雑で、管理もたいへんである。こういった事務処理をもっと効率化する良い方法はないものかと模索していた。

また、原価をなるべく低くおさえるために、定期的に仕入れ価格の見直しを行うようにしたいと考えているが、多種類の部品があるうえにロットによっても価格が変わるなど、価格のチェックはかなりの労力を要するため、実際は徹底した見直しは行われていないのが現状だ。

解決策

ITキーワード【調達サイト】

まず、仕入れ価格をなるべく低く保つために、部品調達を入札形式にすることを決定した。
各社に参加してもらうため、部品メーカー側の負担を軽くするようインターネットを利用することに決め、部品調達のための調達サイトを立ち上げた。
調達サイトでは、U社が仕入れたい部品と納品時期を入力すると、その情報が該当する部品メーカーに連絡される。連絡を受けた部品メーカーは、調達サイトの画面で、在庫と価格、納入日などを入力して入札に参加する。複数の入札があった場合には、低価格な部品を提供してくれるメーカーへ発注する。
入札方式にしたことで価格競争が生まれ、価格見直しの煩雑な処理に煩わされることなく低価格の部品を調達することに成功した。

また、このサイトを通じて発注を行うため、これまで手書きで行っていた発注作業がデータ化され、そのデータを部品納入や会計処理にまで利用できるようになり、何度も同種のデータを書いたり入力したりといった手間が省けることになった。

ITを積極的に活用し、効率化経営につながったとして、社内外の評判を呼んだ。

IT活用のツボ

価格競争の場をつくり、良い製品を安く提供する努力をしている部品メーカーと取引を増やすチャンスを作ったことが大きな成果を呼んでいます。

インターネットを活用することによって、取引先の社内に高価なシステムを導入する必要がないため、参加企業を募りやすくなります。

取引先においても、発注データを自社システムに吸い上げて活用してもらうことによって、データ再入力の手間が省けるというメリットが生まれます。

コスト評価初期投資★★
開発費★★
運営費★★
売上アップ度 ★★
IT難易度 ★★

繊維製品加工

繊維加工の各工程業務をシステム化し、納期短縮、高品質を実現

問題点

繊維製品加工業を営むJ社(G県、従業員者数33名)は、経験による同社独自の染色色見本データを現物生地で保管・管理し、多様な染色機を選別して対応することを強みとしている。
取引先は、こうしたJ社の豊富な現物色見本や多様な染色技術に信頼をおき、発注は徐々に増えてきている。

しかし、受注作業や工程管理の煩雑さから、小ロット受注を受けることができず、また、より早い納入を求められているが、それに応えられていないため、たびたび受注機会を逃している。

解決策

これまで、手作業で行なっていた受注処理をIT化し、各工程の進捗状況を管理できる体制をつくった。これまで作業が煩雑だったために、対応できなかった小ロットの受注が可能になり、自動的に処理される部分が増え、自然と納期までの時間が早まることとなった。

IT活用のツボ

J社は、染色色見本を数値データではなく現物素材を管理し取引先に見せることによって信頼を得ています。こういった部分を、低コスト大量生産を強みとする企業と同じようにIT化することは、かえってマイナスになります。

IT化すべき部分と人為的な作業を残すべき部分を、自社の特質と照らし合わせて正しく判断し、プラス効果をあげる箇所に的を絞ってIT化を進めることが大切です。

コスト評価初期投資★★
開発費★★
運営費★★
売上アップ度 ★★★
IT難易度

照明メーカー

情報共有により社員共通の目的意識を活性化する

問題点

S社は照明器具を製造して卸しているメーカーである。社内の営業部門と管理部門は、それぞれに自分の役割をもっているが、別々に機能していることから、コミュニケーション不足による行き違いなどが見られる。また、経営者サイドからから見て、社員が同じ組織内で同じ目的をもって仕事を分担しているという連帯感にかけていると、常々、感じていた。

S社では早くから受発注システムを導入し、IT化による事務処理の効率化に成功している。そこで、もう一歩進んで、社員の連帯感を高め意識を向上させる方法はないものかと考えていた。

ITキーワード【データ共有】

イントラネットを構築し、社内でバラバラに管理していたデータをネットワークでつなぎ統合し共有した。顧客との商談履歴や顧客情報を一元管理して、このデータを営業部門だけでなく全社員に公開した。

データを公開することによって顧客の顔が見えるようになり、管理部門と営業部門の間で共通の項目について、それぞれの立場から話し合えるようになった。
その過程で、管理部門の社員は顧客を相手に商売をしているという意識が芽生え、営業簿門においては、業務処理上のトラブルなどを事前に回避できるなど、より良い顧客対応が可能になった。
結果として全社が一丸となって同一の問題に対して、対応するという共通意識が芽生え結束が固まった。

システム概念図

IT活用のツボ

IT活用による効率アップは、単に労力や時間の節約ということだけではありません。イントラネットを構築して情報を共有することによって、社員の意識改革を行い、結果として効率アップにつなげることもできます。

ITを導入しさえすれば、コンピュータが勝手に効率化してくれると考えるのではなく、目的意識を持ってひとつの便利な道具を利用するという意識がアナログ部分を活性化することになります。

より有効なIT活用への近道は、いかにアナログのやりとりを楽にするかというところから始まります。

コスト評価初期投資
開発費
運営費
売上アップ度 ★★
IT難易度

婦人服メーカー

デザイン、生産工程時間の短縮で流行のスピードにのる

問題点

婦人服メーカーのF社(東京都、従業員者数21人)は、本社は東京におき、製造コスト低減のために工場は秋田においている。

東京本社にいるデザイナー3人がCADでデザインを作成していたが、データ容量が大きいため電子メールなどで送ることができず、MOなどのメディアを宅配便で送付していた。

婦人服は、流行が移りやすく微妙なデザインやシルエットの違いにより売れ行きが大きく変化することから、頻繁に流行にあわせてデザインを変更する必要があり手間がかかるため、より迅速に製造することが課題となっていた。

解決策

秋田工場がADSLの提供エリアに入ったことを機に、本社と秋田工場ともにADSLでインターネットに接続した。デザインデータをダウンロードできる社員専用のWEBサイトを構築し、工場側からいつでもダウンロードできるようにした。その結果、運送費および運送時間が大幅に削減され、生産力が向上した。

またネットミーティングとPCカメラを利用してデザインの詳細部分の確認をTV電話形式でやりとりすることにより、大幅な時間短縮とコミュニケーション不足を解消につながりスムーズに生産できるようになった。

結果的に、流行に敏感に対応したデザイン力と生産力が向上し、売上拡大につながった。

IT活用のツボ

婦人服のように流行に左右される業界はスピードが早く、製品の寿命が短い。競合他社より優位にたつためには、メーカーが流行の流れをつかむこと、販売店に納入するまでの納期を早くすることが求められます。

この事例では、高速通信ネットワークの利用による時間短縮と、リアルタイムの情報交換が、その2つの目的を実現しています。

コスト評価初期投資
開発費
運営費
売上アップ度 ★★
IT難易度 ★★

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