第16回 経営承継法に基づく総合的支援-事業承継

事業承継で重要なポイントに、「後継者にいかに事業を引き継いでいくか」という点があります。中小企業庁は、その引継の際に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継法)」に基づく事業承継円滑化に向けた支援を実施しています。

1. 対象者

(ア) 相続による自社株式等の散逸を防止したい非上場中小企業の後継者
(イ) 事業承継に伴い多額の資金ニーズが発生している非上場中小企業の後継者
(ウ) 事業承継税制(注1)の適用を受けようとする非上場中小企業の後継者
(注1)事業承継税制については、次回解説します。

2. 支援内容

(ア) 遺留分に関する民法の特例
一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意及び所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、以下の民法の特例を受けることができます。1.対象者 (ア)の方に有効な内容です。
① 生前贈与株式を遺留分の対象から除外
贈与株式を遺留分減殺請求の対象外とすることで、相続に伴う株式分散を未然に防止できます。
② 生前贈与株式の評価額を予め固定
後継者の貢献による株式価値上昇分を遺留分減殺請求の対象外とすることで、企業価値の向上を心配することなく、経営に集中できます。
<遺留分とは?>
遺留分とは、配偶者や子などに民法上保障される最低限の資産承継の権利です。後継者への生前贈与により、非後継者が実際に得られた相続財産が遺留分に足りない場合、後継者は非後継者からその足りない遺留分を取り戻すための請求を受けるおそれがあります。
(イ) 金融支援
事業承継に伴う多額な資金ニーズ(自社株式や事業用資産の買取資金、相続税納税資金等)や信用力低下による取引・資金調達等への支障が生じている場合に、経済産業大臣の認定を受けることで、
① 信用保険の別枠化による信用保証枠の拡大
② 株式会社日本政策金融公庫等による代表者個人に対する貸付け
を利用することができます。
なお、②に関しては、親族のみに限らず、親族外の役員や従業員が事業を承継するために自社株式事業用資産を買い取る場合にも利用することが可能です。

3. 問い合わせ先

・中小企業庁 財務課
 電話:03-3501-5803
・各地方経済産業局産業部中小企業課(各地方にあります)

執筆者紹介
大井 宏明(おおいひろあき)

株式会社ルーキー
代表取締役社長

公認会計士。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年から監査法人トーマツにてベンチャー企業の株式公開支援業務、法定監査業務、その他各種コンサルティング業務に従事。2005年末に監査法人トーマツ退社後、2006年初から上場準備企業の取締役CFOに就任し、上場準備業務の統括責任者となる。2008年株式会社ルーキーを設立、代表取締役社長に就任。経営戦略立案や社内体制整備等の各種コンサルティング業務を実施している。
株式会社ルーキーホームページ:http://rookie-japan.com

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