【第5回講座】ISOと情報システムの関係

第5回のテーマは「ISOと情報システムの関係」です。パソコンと企業内ネットワーク(イントラネット)の普及で、文書管理をはじめネットワーク上で管理するという情報システムの電子化・ネットワーク化が押し寄せています。

電子化システムでもISO9001の要求事項は満たす必要があり、「電子媒体とネットワークの特性から来る特有の問題が文書管理にないだろうか?」、「審査および承認で、中には電子媒体上のハンコがいるのか?」等々、沢山疑問が出るのは自然な流れです。

そこで今回は「文書の電子媒体管理」について、実際にあった事例(あるメーリングリストでの発言を参照し要約したもの)から学んでいきましょう。

【相談例】

ISO9001を取得のため、文書及びデータ管理で文書の承認印や確認印を押しているとISOの要求文書だけでも相当な量になります。業務上の文書・図面・データの保管だけでも書庫が満杯の状態なのに・・・
当社ではISOの認証・取得にあたり、電子媒体で管理しようと考えておりますが、「承認」「確認」「従業員による改竄を防止する為のセキュリティ」の運用・管理のしかたよく分かりません。
ちなみに当社ではWINDOWS98で社内LANを組んでいます。WINDOWS NTではないので、セキュリティの面であまり良いとは言えません。また、CD-R等で正式文書を残すとか、書き込み禁止にして、保存っていうのも考えてみたりしてます。
今私が考えているのは、「文書はやはり電子媒体で管理したい」、そして「記録はしばらくは紙で行う」、でもその記録の中でも「台帳のようなものは電子媒体で管理していこう」などです。
ISO取得の皆様は一体どのような方法で文書・データ等の管理をしているのでしょうか?他社での電子媒体の承認・確認・セキュリティ・保存方法等などをどうか教えて下さい。よろしくお願い致します。
ここでのご意見も是非参考にして、もう少しその辺の詳細等は思考を重ねて行きたいと思っていますのでご指導の程、よろしくお願い致します。

それでは、上記の問題解決のために参考となる4つ事例を見て参りましょう。

【事例1】紙ベースでの実施を推奨

大多数の企業では、取得時は紙ベースで本審査を受けています。なぜならば、試運用期間はあるものの、認証後における維持において規定、手順通り本当に上手く行くかどうかの若干の不安が残っているからです。一方、紙ベースでの実施がうまく行けばいつでも電子媒体化は可能です。それより、御社が確立しようとしているシステムを確実なものとして構築してからでも遅くはないのではと思います。認証取得時は紙ベースで受審される方針を立てられてはいかがでしょう。
「承認」「確認」「セキュリティ」については、本来の作成、確認(点検)、承認の行為 (プロセス)に対し、横槍が入らない仕組みにすれば良いことだと思います。電子版なら必ずしも確認、承認には印(印影)がなくても審査が通るはずです。
重要なのは品質システム上で、「作成者」→「確認者(点検者)」→「承認者」という流れを確立することです。電子化をされた多くの企業さんでは、正規文書(最新版 の)は、本社共通のサーバに登録し、利用者にはアクセス権の制限をかけている様ですが、ようは決められた責任者が文書の審査および承認ができる仕組みになっており、未承認文書はネットワーク上に流通し、自由に閲覧(または使用)されないようにすることです。これには例えばIDとパスワードをうまく使う方法があります。もっと原始的には、とりあえずハードコピー(紙)に打ち出した文書で審査・承認し、それを原紙として管理する方法もあります。この場合は電子媒体(ネットワーク)に載る文書(いわばコピー)が原紙と確実に同一であるように、システム的にどういう工夫を凝らすかがポイントになるでしょう。

【事例2】最初から電子媒体で行う例

紙の文書管理と電子文書管理の特徴を一言でいうと「紙の文書管理は皆が苦しみ、電子文書管理は文書のキーマンだけがものすごく苦しむ」です。最初から電子媒体で行った例のポイントは次の通りです。

1.電子化するのは、品質マニュアルほか、上位文書だけ対象とする。

品質計画書など、製品毎・現場毎に作り直す下位文書や記録・データは確認・承認の運用面での問題があり、電子化の対象としては難しいのが現状である。

2.管理文書は、電子文書と副本1部のみにする。

文書の表紙には、「本文書はサーバー上でのみ有効。プリントしたものは、承認用の副本以外、すべて管理対象外とする」プリントした副本を1部だけ作り、そこに 確認・承認の押印する。

3.イントラネットとアドビ・アクロバットを使用する。

イントラネットにした理由は、当社で現場作業所からはダイヤルアップで接続する必要があったため。アクロバットを使った理由は、このソフトで作った文書は簡単には修正できないから。(但しver. 4になって、部分修正が可能)
運用ルールは「修正に使うソフトは各自のパソコンへインストール禁止」とする。サイトが分かれていない会社なら、イントラネットを使わなくても、LAN上での運営で十分。特定のフォルダに電子文書を入れておき、そのフォルダは担当者以外は更新不可にすればよい。

4.セキュリティの問題は、あまり深刻に考えない。

紙の文書でも「夜中に怪しの者が忍び込んで、こっそり紙を入れ替えてしまうかもしれない」から同じこと。最新版のバックアップを、フロッピーかMOにでもとって、しっかりしまっておけば十分。

文書の副本をCDの形にして現場に配っている企業もあるが、これだと結局紙と同様の最新版管理が必要になってしまい、あまり電子化のメリットは出ない。

【事例3】完全ペーパーレスで電子化

完全ペーパーレスで電子化されているのは、SCOPE内の一部機能だけの例ですが特徴は次の通りです。

【事例4】ISO対応文書管理システムの活用例

ISO対応した文書管理システムは、大きく分けて2系統あるようです。①ノーツなどワークフロー機能があるグループウェアに乗っかって、電子承認するもの。②RDBMS(OracleやSQLServerなど)をベースに、ワークフロー機能を構築してあるもの。
電子媒体や企業内ネットワーク(イントラネット)に向いた文書管理の各種市販パッケージツールには、下記のようなものがありますが、全てであるというわけではなく、また、ここに取り上げたからといって推奨するわけでもありません。お値段は、ピンからきりまで選り取りみどりのようです。導入にあたってはいくつかの会社のデモを見て決定するとよいでしょう。

ISOLUTION
アイソリューション、NECの製品
文書体系によって構成された多くの品質文書(品質マニュアル・手順書・標準/基準類・指示書など)を維持/管理するためのシステム
ISOじまん
TIS 東洋情報システム
イソロジー
京セラコミュニケーションシステム株式会社
Lotus Notes R4J対応のパッケージソフト
Interleaf RDM
インターリーフ 米国Interleaf社が開発販売しているDTP

以上、文書の電子媒体管理事例を4つ見てきました。文書管理の電子化には、幾つかのレベルがあります。電子媒体やネットワークは使うが管理(審査・承認、配付、使用など)はあくまでも「紙」で行うというレベルから、全てネットワーク上で行う完全ペーパーレスというレベルまでです。前者は従来の「紙とハンコの文化」の範疇に入りますから、それ以上に特別な注意がいるわけではありません。

後者の場合は、文書の版(バージョン)の切り替えや文書配付が電子的に行えるので、非常に有効な文書管理の手段になります。しかし現実的に考えると、ハードコピー(紙)を全く使用しない電子的文書管理はまだ存在しにくいでしょう。なぜなら、製造現場や外注先にとっては「紙に描かれた図面」や指示書がないと目先の仕事が出来ない場合があるからです。従ってどこかで紙による従来の文書管理の手順が残ることになるでしょう。

また一方では、「電子文書で本当に仕事になるのでしょうか?」「皆んなモニター眺めて仕事するのしょうか?」と電子化での運用アレルギーの人が多いのも事実です。

確かに皆がモニター眺めて仕事するはずがありませんし、逆に紙の文書で管理している所でも、従業員が管理文書を見ながら仕事をしているのは稀のはずです。

文書は(特に上位文書は)ほとんど見ないし、参考にする必要がある文書は、使うところだけコピーをとって、書き込みをしたりしながら使っている(建前ではコピー禁止となっていても、実際はコピーして使っている)場合が見受けられるのです。

要するに、なぜ電子化するか?という問いの答えは「管理し易くするため」です。紙のファイルを何冊も書棚に並べておくよりも、MOを1枚持つ方が便利ですよね。場所もとらないし、検索も容易だし、省資源で環境にもやさしいし.....。

認証・取得を推進する当初は、電子化が「品質システム」運用の為の重要な解になるのでは?と、本質をすり替えそうになりますが、それは二の次、三の次の問題で、「文書」/「記録」の明確な定義を全員に浸透理解させるのが先決のようです。

さらにISO9001の要求事項とは必ずしもリンクしませんが、電子化システムでの文書管理では①セキュリティ、②バックアップ、③アクセサビリティ、④アベイラビリティ、⑤ウィルス対策 を行うことが大事になってきます。

この問題は業種や業務によってもボリュウムが違いますし、従業員の情報リテラシー(とくに中高年層)の程度や電子化の急務度によっても違ってきます。

電子媒体管理について検討されている方は、上記の事例を参考にして、自社なりの事情を充分に検討して取り組んで頂きたいと思います。

新規会員登録