特集:微細加工

ワーク自動持ち替えシステム「ORIGAMI」

株式会社入曽精密

株式会社入曽精密 代表取締役社長 斎藤 清和氏

ワークサイズ8mm~0.1mmのハンドリングに威力を発揮する治具システムの開発に成功。微細加工を普通の町工場に。

3軸マシニングセンタに取り付けるだけ

柔らかいフォルムに削り出された「アルミのバラ」、人の目では、どこにあるのかも見失うかのような「0.1mm」の世界最小サイコロ。工作機械の可能性を極限まで追求してきた斎藤氏は、「できないというのは、自分が勝手に作った壁に過ぎない。飯を食わしてくれる自分の機械を信じなきゃだめだ」と笑う。

精密加工で、数々のサプライズを発表してきた同社は、2017年、ついにそのサプライズを普通のこととして誰もが作り出せる治具ORI GAMI(オリガミ)」を発表した。

このORIGAMIは、立型3軸のマシニングセンタに取り付けるだけで、8mm~0.1mm以下の極小な素材を6面方向から切削できるようになる治具だ。そこに熟練の技は必要なく、入社1年目の人でも「0.1mm」のサイコロを削り出せるようになるというのだから驚くばかりだ。

マシニングセンタが3軸+5軸に

株式会社入曽精密

ORIGAMIの機構は、第一ユニットに取り付けられたホルダーで材料をはさんで持たせ、第二ユニットに治具用素材を持たせる。その場で治具を削り出し、次に材料を5面まで加工したのち、削り出しておいた治具に受け渡して固定し、残りの6面目を加工する。その場で治具を作ることから、ほぼ全自動で作業でき、繰返し精度も上がる。同社のホームページでは動画でも紹介されているので、ぜひ見ていただきたい。

以前は、こうした精密加工は同社だからできる技術で、市場もないと言われたが、医療器具の進化を支えるのは、まさにこうした加工であり、いま市場に求められている技術領域だ。ある医療器具のトップメーカーが内視鏡最先端部品の相談に訪れた際には、どこへ行っても断られたと話す担当者に、「仕様書にあるより、もっと小さいのが作れる」と逆提案したこともあるという。

中古のマシニングセンタでも問題はない。こうした技術力を可能にするのがORIGAMIだ。0.1mmサイズ部品といった微細な加工も技術者でなく学生でも加工が可能になる。それに、例えば従来1,200分は必要だった加工が、たった10分に短縮できたという。

町工場の応援団

株式会社入曽精密

技術を独占しようとせず、ORIGAMIとして汎用的な技術にしていこうとするのは、常に新しいものへのチャレンジを追い求めているからなのだろう。無理難題に取り組みつづける社長に社員はついてこられるのかと聞くと、「社長ができるというのならできるんだろう」と、社員も安心してチャレンジしているとのことだ。

どんな人が切削加工に向くかと聞いたところ「現象と素直に向き合う探究心を持っていること」という回答が返ってきた。日本人には「正直」というモラルが残っており、これが日本製造業の背骨であり、マシニングセンタの可能性を追求するためにも必要な性質だという。

斎藤氏は1995年当時から、すでにデータサーバーを活用したマシニングセンタの制御を試し、多くのノウハウを得ている。IoTやAIといった言葉が生まれるはるか以前からだ。今後、どのようなサプライズが生み出されるのか、期待が高まる。

微細加工工業会への期待

「自分たちの得意分野を持ち寄って、まとまってプラットフォームとして世界にアピールしていく。これを諸外国は官が主導しますが、日本では民でできることに意味があると思います。横につながることができるというのが、日本の強さだと思います。微細加工工業会にはこの役割を期待します」

株式会社入曽精密

所在地

〒358-0033 埼玉県入間市狭山台4-6-7

TEL

04-2934-4633

URL

http://www.iriso-seimitsu.co.jp

エミダス会員番号

63700

 

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