特集:自社商品開発

株式会社エステーリンク

株式会社エステーリンク

株式会社エステーリンクは、新潟県燕市に本社を構える社員80人規模の板金屋である。板金加工以外にも、加工現場で使用する自社開発した機械の製造・販売も行っている。今回はそんな自社商品の中の一つである“メタルエステ”について齋藤隆範社長にお話を伺った。

最初にバリ取り機の開発に乗り出したのは2006年だった。当時から手作業でやっていたバリ取り加工をなんとか簡略化し、生産性を上げる装置の開発を望んでいた同社は、まずそのプロトタイプを社内で製作してみることにした。
だが外側は作れても、肝心のブラシ部分を作るのは簡単ではなかった。齋藤氏が「バリ取り機において、ブラシの重要性が半分、もう半分が機械的な特異性」だと言うほどブラシは重要だが、いろいろ試みた結果、社外製作で上手くいかない期間が長かった。国内の研磨ブラシ屋に相談したが見たことのない製品のブラシの開発は難しく、海外の類似品を見せてみても、なかなかイメージが繋がらない。互いに提案し合い試作をしてみたが機械に装着して削ってみるとまったく削れず、回転させているうちにブラシがバラバラに破壊されてしまったり、機械の止め方に問題があったりなど問題は尽きなかった。「こんなブラシじゃダメだ」と、試行錯誤の時期が続き、なんとか完成するまでに3年ほどがかかった。

自社のために作った機械が、噂を呼んだ

株式会社エステーリンクメタルエステ1000

株式会社エステーリンク

完成したバリ取り機を自社内で使用し、効率も完成度も各段に上がった。すると噂を聞きつけた同業の板金屋から「その製品をうちにも欲しい」と要望が来るようになった。「バリ取りなんてお金をかけられるところではない」と考えていたが、いくつも要望があったために商品化を考えるようになる。
しかし社内で使用されているバリ取り機は、あくまで社内だけで使う事を想定して作ったものだ。もし社外の企業に納品するならば、美観やサイズなどを考え直さねばならない。とくにサイズに関しては、自社用のモノは最低限の部品で組み立てていたためコンパクトだったが、社外に出すためにはカバーをつけ足したりと改善する必要があった。結果できあがったバリ取り機は、自社用の約1.5倍ものサイズになってしまい、納品先を驚かせてしまうことになる。それからは、商品化するためにはどうしたらいいかとまた試行錯誤の日々が始まった。「ダメ出しをたくさんもらわないと次の商品に結び付かない、という体験は今でも忘れません」と齋藤氏は語る。
バリ取り機を『メタルエステ』として商品化すると「これを売りましょう!」と声をかけてもらうことも多くなった。当時20代だった齋藤氏は、その方々と共に方々へと売り込みに行く。しかし、いかんせん現場の経験ばかりで営業のノウハウがない。このままではせっかく開発したメタルエステの価値をきちんと届けることができないと感じ、自社で丁寧に宣伝・販売をしようと考えた。ちょうどその頃、日刊工業新聞が主催する第1回MF東京展示会(2009年)へ参加する機会が訪れる。「この展示会出展を皮切りに。もっと宣伝していこう」と決意を固めた。

展示会で世界が広がった!

工場用大型空気清浄機
『BPFCA-100』

しかし大きな展示会への自社出展は初めての経験である。当時、製造に注力していた当社は、広告宣伝費を掛ける事に抵抗があった中、新しい挑戦としてバリ取り機を展示することにした。それまで営業の際には、板金加工や自社開発の集塵機といった複数の技術について宣伝する方法だったが、展示会ではバリ取り機一本での営業に絞った。それにより「世界が一気に広がった」と齋藤氏は振り返る。
展示会場では、同業である板金加工の企業とたくさん出会うことができた。展示会終了後には、名刺を交換した全国の企業を訪問する。営業担当者が社内にひとりもいないなか、30歳を過ぎたばかりの齋藤氏がひとりでアポをとり、夜中に車を走らせて各地をまわった。もちろん訪問しても取り合ってくれない会社もある。しかし一方で「わざわざ来たのか、うちもバリ取りで困っているんだよ」と迎え入れてくれたり、近所の板金屋を紹介してくれる方もいた。とくに強みとなったのは、齋藤氏自身に現場経験が長かったことだ。訪問先では現場の加工について話が盛り上がり、バリ取りの悩みなども具体的に意見交換することができた。なかには「現場のことができるのか?」とその場で加工をやらされることもあったが、スーツ姿で溶接をする齋藤氏に相手も心を開いていった。この頃、齋藤氏が車でまわった距離は、1年間で75,000kmに及ぶ。
その後はお客様の声を取り入れながらハンディタイプ『メタルハンズ』やドロス除去機『メタルスライダー』などシリーズ化していく。 『メタルエステ』専門の営業チームもでき、2022年現在は自社製品の売上のうち40~50%を占めている。
今後は『メタルエステ』の改良はもちろん、IoT化のために数値をデータ化するバリ取り機を開発中だ。また2022年7月には、工場全体の溶接ヒュームを含む空気を改善する大型空気清浄機(ダクト工事不要)を展示会にてお披露目した。板金屋だからこそ、現場の加工がわかる──それを強みに、よりお客様の声を反映した作業効率の向上、工場の環境改善に役立つ設備を開発し続けている。

株式会社エステーリンク

本社

〒959-0113新潟県燕市笈ケ島1365-1

TEL

0256-97-4846

FAX

0256-98-4821

URL

https://www.st-link.co.jp/

 

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