特集:「測定・検査の省力化」

最新の測定設備と中小製造業の現状から考えるこれからの品質管理

 

 

攻めの測定

「攻めの測定」とは、研究開発、新商品の試作等の段階で必要とされる測定技術であり、「攻めの測定」技術の高度化が、イノベーティブな商品開発にとって不可欠である。「測れないものは作れない」とは製造業界で昔から言われる格言の一つだが、測定機、分析機の高度化による素材の物性や機能性に関する新たな発見が、逆に製造技術を深化させる効果も生み出す。そこでは新たな課題も生じてくる。

一例として、微細穴加工を取り上げてみよう。近年の加工技術の急速な発展により、機械加工でもφ0.01もしくはそれ以下のサイズの微細穴加工ができるようになってきた。ここで課題になるのが、どうやって測るかである。穴を開けるだけでは意味がなく、“要求精度を満たしているか” が問題である。

下記指標の中でφ0.01の穴の穴径精度や穴ピッチ精度を考えた場合、「光学的な見た目で精度を測定していいのか」という問題が生じてくる。「誰が測っても同じ結果になる」のは、測定の世界での基本中の基本だが、実務では、発注者と受託加工事業者間で「穴のどこを基準にして、径やピッチなどの測定を行うか」を巡って、意見が対立する場面が発生する。測定技術、測定機器はこのような状況をどう解決していけるのか、高精度加工時代に対応した新たな測定規格や技術的チャレンジが必要になっている。

 

守りの測定

「守りの測定」とは、従来通り不良品の発生・流出を防ぐ目的の測定である。不良品を100%発生させない加工ラインは存在せず、それ故検査工程によって「不良品の発生・流出を防ぐ」ことが品質管理上、極めて重要となる。日本製造業の信頼は「守りの測定」技術によって生み出されていると言っても過言ではなく、「攻めの測定」と「守りの測定」技術のバランスが、今後の日本製造業の発展にとって重要である。

実際、産業用計測機器の市場自体も伸びている。2022年の約1.4兆円から、2027年には約1.9兆円に達すると予測されている(※株式会社グローバルインフォメーション予測/1ドル130円で換算)。また別の予想では、3D計測機器市場に限っても、2021年に約1.25兆円だったものが、2030年には3D計測市場の収益は約2.55兆円に達すると予測されている(※2021年12月8日、REPORTOCEAN発表)

新たなトレンド検査自動化への対応

近年の測定分野でもう一つ重要なトレンドが「検査の省力化・自動化」である。加工現場で進む技術者・作業者の高齢化や人手不足に対応するべく、加工事業者は、製造プロセスの省力化・自動化を推進してきた。製造装置を提供するメーカー側もこれに対応するべく、現場で使い易いロボットや複合加工機等の開発を推し進めている。2021年の産業用ロボットの世界市場規模は約5.5兆円(1ドル130円で換算)だが、2030年には約15.2兆円に達すると予測される(※2022年2月23日、REPORTOCEAN調べ)。従来は自動車メーカーの量産工程などでしか使われなかった産業用ロボットが、中小製造業の加工現場でも、段取り替えのサポートや部材のハンドリング等で使用されるようになり、急速に自動化が進んでいる。

そして製造ラインの自動化に対応するように「検査の省力化・自動化」も急速に進みつつある。従来の部品検査は、日本に比べて賃金の安い東南アジアでの、多くの検査員による人海戦術的な検査が典型であった。しかし近年では賃金の高騰、部品の多品種少量化・高度化等々の要因により、人主体の検査方法は限界を迎えつつある。また国内に関していえば、熟練の検査員の高齢化と若手育成は長年の課題となっている。

このような状況に対応すべく、大手自動車メーカーやアッセンブリーメーカーは、2000年代以降のIT高度化・低価格化を背景に、製造ライン組み込み型での検査の省力化を推し進めてきた。一方、サプライヤーである中小製造業の現場ではどうか。製造自体の省力化・自動化、DXの流れはここ数年で本格化してきてはいるものの、メーカーからのコスト要求は強まっており、発注金額に検査の省力化・自動化のコストまでは織り込まれていない状況である。

日本のものづくりが世界に必要とされるには、大手メーカーとそのサプライヤーである中小製造業の一致団結で、不良のない製品を提供することが重要である。そのためには、中小製造業でも品質管理に十分な投資を行うことが不可欠だ。この中で、「中小製造現場の検査省力化」は具体的にどのように進めればいいのか。次ページからは「検査の省力化・自動化」に関する最新の技術と、中小製造業の現場の声を紹介する。

 

掲載企業

大手測定機器メーカーに聞いた、最新の技術トレンド

・株式会社東京精密
・株式会社ミツトヨ
・日本電子株式会社
・パナソニック プロダクションエンジニアリング株式会社
・ファロージャパン株式会社

中小製造業における品質管理の現状と今後の展望

・昭和精工株式会社
・株式会社野上技研
・株式会社山本金属製作所 岡山研究開発センター
・オーティス株式会社
・多田プラスチック工業株式会社
・岩機ダイカスト工業株式会社
・株式会社東陽理化学研究所
・株式会社大日光・エンジニアリング

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