【知らないと損する ベトナムビジネスの基礎知識】 第2回
試用期間に関する注意事項 その1

執筆者:斉藤雄久氏(AIC Vietnam Co.,LTD.代表)



今回より2回に分けて、試用期間に関して解説します。まず今回は、一般的な注意事項と強制保険への加入についてです。


Ⅰ.一般的な注意事項
(1)よほど特別な事情でもない限り、雇用に際してまずは試用期間を設けるべきです。労働法に基づく試用契約書に記載する内容は、下記の通りです。

① 雇用者・または法的代表者の情報(氏名と住所)
② 被雇用者の情報(氏名、生年月日、性別、住所、身分証明書の番号、あるいは被雇用者の身元を示す合法的な文書)
③ 職務と職場
④ 契約期間
⑤ 給与額、給与の支払い形式と期限、諸手当、その他の補充額
⑥ 勤務時間、休憩時間
⑦ 労働保護設備の提供(労働法第23条1項、第26条1項)。

(2)試用期間の日数は、被雇用者の就く業務レベルによって、以下の通り異なっています(同法第27条1~3項)。

① 短期大学卒以上の専門性が必要な業務に就く場合は60日)
② 職業訓練校・専門学校・スキルを有する労働者・経験を有する補助的な事務の業務に就く場合は30日
③ その他は6営業日。試用期間をすべて60日と誤解している方を、しばしばお見受けします。

(3)試用期間中においては、労使双方が事前通告や補償の義務を負わず、試用契約を即時解除することができます(労働法第29条2項)。

(4)雇用者は試用期間の終了に先立ち、その後も正規に雇用するか否かを、被雇用者に事前通知する必要があります。その期限ですが、上記(2)の①②場合には、試用期間終了日の3日前まで、③の場合は試用期間の終了日までとなっています(政令No.05/2015/ND-CP第7条および2015年7月15日付け労働傷病兵社会事業省・労働総連盟による公文書No.2756/LDTBXH-LDTL)。

(5)不採用の通知について、法規上は文書による通知義務はなく、口頭でも問題ありません。ただし雇用者としては、慎重に対応することが望ましく、試用契約書の解除合意書(言語はベトナム語と外国語の併記)を作成し、労使双方がそれぞれ1部に署名・保管する事をお奨めします。


Ⅱ.強制保険への加入義務
(1)2018年1月1日以降、1~3ヶ月未満の雇用契約を締結した者も、社会保険への加入義務が生じています。ただし、試用契約の場合は、対象者外になります(社会保険法No.58/2014/QH13第2条1項b、ホーチミン市社会保険局の公文書No.1734/BHXH-QLT第2項2.2a)。

(2)医療保険、失業保険については、3ヶ月以上の雇用契約を結んだ者が対象者になります(医療保険法第12条1項、就職法第43条1項)。ですので、試用契約は対象者外となります。

(3)試用契約中の失業保険の未払い期間について、以前は被雇用者が12ヶ月以上勤務して退職した際、雇用者はその未納の期間に対して退職手当、失業手当を支払う義務がありました(労働法第48条2項、政令No.05/2015/ND-CP第14条3項)。ただし、2018年12月15日以降、試用契約の期間は退職手当・失業手当を算出する際の期間に含まれなくなりました(政令No.148/2018/ND-CP第1条5項)。


次回は、試用期間における労災発生時の対応、訓練契約、違反行為への罰則などを解説します。



執筆者プロフィール
斉藤雄久(さいとう・たかひさ)
東京都葛飾区出身、早稲田大学社会科学部卒。1994年12月のハノイ大学への留学以降、ベトナム在住は25年以上となる。現在AIC Vietnam Co.,LTD.のPresident。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規にも基づく実務的なアドバイス業務を実践するほか、国内外での講演も多数。


AIC Vietnam Co.,LTD.の公式サイトは、こちら

出典:『月刊エミダス ベトナム版』掲載号は、こちら
 







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