【知らないと損する ベトナムビジネスの基礎知識】 第6回
新労働法について その2

執筆者:斉藤雄久氏(AIC Vietnam Co.,LTD.代表)



新労働法に関して、今回と次回は雇用契約書について解説します。


1.契約の名称
(1)新労働法では、一方の当事者への報酬の支払い、給与、管理、監督について示す内容がある契約について、別の名称での契約(例えば、パートタイム契約、役務提供契約など)である場合も、当該の契約書を雇用契約と見なす内容が記載されています(同法第13条)。現行の労働法には、このような内容は記載されていません。

(2)雇用契約書であれば、雇用者には社会保険の加入義務が発生しますが、パートタイム契約等の名称であれば、その義務を回避できます。新労働法では、そのような行為を禁ずる事にしたと考えます。

(3)こういった事例は、日系企業でも見られます。現在パートタイム契約やサービス契約を締結している雇用者は、今後は注意が必要となります。


2.職業訓練契約
(1)現行法では、この契約に関しては雇用期間も含めて、詳細な規定がありません(同法第61条)。実際には被雇用者を生産活動に使用しているのに、契約は職業訓練契約という事例もあります。

(2)新労働法では、それを禁じるための内容が補則されており、職業訓練契約について以下の2つの事例が記載されています。

① 職業訓練:被雇用者を採用し、職場で職業教育を実施する。その教育期間は職務ごとに職業訓練法の規定に基づく(同法第61条1項)対象は高校卒業者で、過去に職業訓練を受けた事がない者と解釈でき、雇用者は教育プログラムの資料等を準備しておく必要があると考えます。

② 実務訓練:被雇用者を採用し、職場で職務を実践できるように指導・訓練する。期間は3ヵ月を超えないものとなる(同条2項)。対象者は、職業訓練を受けた者と考えられます。


3.口頭による契約
(1)現行法では、期間が3ヶ月未満の一時的な業務であれば、口頭による雇用契約の締結も認められています(同法第16条2項)。

(2)新労働法では、1ヶ月未満の期間でのみ、口頭による契約が認められる事に修正されています。ただし、12ヶ月未満の季節的な業務契約、15歳未満の者との契約、家事手伝いの契約の場合は、除外されます(同法第14条2項)。


4.電子データによる契約
現行法にはない内容ですが、新労働法では電子取引に関する法規に基づき、電子データで雇用契約を締結する事も、書面による雇用契約と同様の価値を持つ事が補則されています(同法第14条1項)。これは大人数を雇用する企業にとって朗報です。


5.雇用契約の種類
(1)現行法では、以下の3種類の雇用契約があります(同法第22条1項)。
(ⅰ) 無期限契約 (ⅱ) 12ヶ月から36ヶ月の有期限契約 (ⅲ) 12ヶ月未満の季節的な業務、あるいは特定の業務

(2)一方の新労働法では、以下の2種類の契約となります(同法第20条1項)。
(ⅰ) 無期限契約 (ⅱ)契約の発効日から36ヶ月以内の期間での有期限契約

(3)新労働法においては、季節的な業務や特定業務の契約の締結が認められず、これらはすべて有期限契約となります。ただし、日系企業においては、季節的な業務契約等を締結する事例は少なく、この内容の修正は大きな影響を及ぼさないでしょう。



執筆者プロフィール
斉藤雄久(さいとう・たかひさ)
東京都葛飾区出身、早稲田大学社会科学部卒。1994年12月のハノイ大学への留学以降、ベトナム在住は25年以上となる。現在AIC Vietnam Co.,LTD.のPresident。当地での豊富なビジネス経験に基づく独自の観点から、法規にも基づく実務的なアドバイス業務を実践するほか、国内外での講演も多数。


AIC Vietnam Co.,LTD.の公式サイトは、こちら

出典:『月刊エミダス ベトナム版』掲載号は、こちら
 







【海外進出のお困りごとはこちらまで】

株式会社NCネットワーク メディア・リサーチ事業部
TEL: 03-6284-3080    E-MAIL: mr@nc-net.or.jp


  • オンラインでのお問い合わせ


 

新規会員登録