第3回 辻プラスチック 株式会社

辻プラスチック 株式会社 技術部 辻 喜勝 氏 技術部 辻 喜勝 氏

辻プラスチック 株式会社

所在地

滋賀県神崎郡

TEL

0748-48-2206

FAX

0748-48-2720

担当者

辻 喜勝

事業内容

産業機械用、装置安全カバ・MIN成形、射出成形品・樹脂、金属加工

新事業展開のために

 インターネットの世界では、ドッグイヤーなる表現が好んで使われている。
犬の一年は、人間にとっては7年ぶんに相当する。インターネット業界では、一年がほかの業界の7年ぶんにあたるほど変化が早いということから言われるようになったという。
逆に言えば、ほかの業界はインターネット業界の7分の1のスピードであるということになる。今日、とくに製造業界において、そんなにゆっくり進んでいると感じられるだろうか。バブル崩壊後、グローバル調達の波が押し寄せ、中小製造業が手がける仕事の海外流出は止まらない。製造業とて、変化していかなければ生き残れない状況になっている。
こうした環境の中、たいへんなスピードで変化し続けている会社が辻プラスチック株式会社だ。

辻プラスチックは、昭和43年に辻の父が創立したプラスチック射出成形加工を営む会社である。辻は、会社の後継者にあたるのだが、モノづくりに興味がなく大学を卒業するころは大手証券会社への就職を決めていた。

ところが、就職したのは従業員20名の金型工場だった。卒業直前に証券会社への就職を断ってしまったのだ。「金融業より製造業のほうに好奇心が芽生えた」というところに、町工場育ちをうかがわせる。時代は昭和から平成に変わるころのことであった。

就職した金型工場は、当時にしても職人気質の会社であり、上司に仕事は体で覚えろと言われながらも、持ち前の飲み込みのよさで3年を過ぎたころにはひとつの金型を作るところまで漕ぎつけた。
それから1年後、辻は父の会社に入社した。

辻 喜勝

会社に入ると、まず外注頼りだった金型製作の内製化にとりかかった。苦労などは数え切れないほどあったが、普及し始めたCAD/CAMに積極的に取り込む事によって順調に内製化をすすめ、当初の目標をひとつクリアした。そしてもうひとつの目標である自社製品を作るためにFA課を設けた。もちろん、部署を設けても仕事があったわけではない。本業のプラスチック成形の仕事をこなすかたわら、辻は営業に出かける。
ずっと売上が上がらないまま、時間だけが過ぎていった。

「会社に入るときから、下請け体質から抜け出したくてFAの部隊を作りました。プラスチック以外何も知らないけど、とにかくやるしかない、と」辻は自社製品を作るという意志を持ち続けていた。

ようやく産業機器メーカーから機械の防護用カバーの引き合いがあった。設備一式の嬉しい一括受注だった。が、問題は部材の調達だった。

今まで射出成形の下請け専業だったために、調達先の当てがあるわけではなかった。そこで辻が目をつけたのは、NCネットワークのEMIDAS工場検索エンジンだった。これを使えば、必要なものが希望価格で調達できるかもしれない。
辻の予感は的中した。すぐに部材の加工先が見つかり、希望より早く納入することができた。このことが高く評価され、継続的に注文が入るようになり、防護用カバーは新事業の柱となった。ところが辻は、これに安住することなく次の営業に出かけるのであった。

そのころ、ある大学の教授が自分の特許を製品化してくれる町工場を探していた。その製品とは、地面に埋め込む自発光タイプのタイルである。その情報を聞きつけた辻は、自社で引き受けたいことを伝えた。

初めての電子製品であるが、辻に不安はなかった。外装の樹脂成形は自社で行い、中身の電子部品や金属部品はエミダス工場エンジンを使えば、集めることができるからだ。製品を完成させるまでには、多くの困難があったが粘り強くひとつひとつ解決して、それを乗り越えた。

辻プラスチック(株)

辻プラスチックがエミダスに登録したのが2001年春のことである。すでに仕事の半分は、新事業でまかなえるようになった。わずか半年の間に、ここまで変化しているのは驚異である。なぜこんなに早く展開できたのだろうか。

「ほんとにもう、好奇心だけです。自分のところで作った、ってモノが欲しかったんですね」

辻はさらりと言ってのけるが、その目はすでに次の製品に向いている。この飽くなき探究心がモノづくりの原点なのかもしれない。

辻プラスチック 株式会社

工場情報はこちら

新規会員登録