第9回 インターネットのビジネス利用状況アンケート調査

ネット受注事例のご紹介 [3]

「ローテクのメリットをホームページでアピール」

福東製作所(福井県) 甲野 琢二 さん

福東製作所(福井県福井市)は、およそ64年の歴史を持つ旋盤加工の会社だ。戦前は航空機部品の鉄加工に着手し、戦後は現在に至るまで繊維機械の部品を手がける。同時にこれまでの技術を応用し、射出成形によるプラスチック眼鏡レンズ用ガスケットを、金型設計から製作まで一貫して行う。眼鏡のレンズは目の悪さによって異なるため、その品種は約1000種類に上る。

同社は、従業員が10人に満たない、いわゆる零細企業で、最新の設備を導入することは現実的に難しい。しかし同社には、他社には無い「ローテクが生むメリット」という強みがある。

お話を伺った甲野さんは、以前、大手電器メーカーで機械設計に携わっていた。本社への配属を希望する社員が多い中、甲野さんは自ら現場を希望した。しかし、組織が大きければ大きいほど、自分の力ではどうにもならない事に限界を感じ始めた。「自分を試したい」との熱意に満ちた甲野さんは、挑戦の場に福東製作所を選んだ。

同社がインターネットに注目し始めたのは、昨年の春。所属する福井県機械工業青年会の仲間のアドバイスがきっかけとなり、7月にはホームページを開設。同時にエミダスに工場情報を登録した。

朝・昼・晩(帰宅後)常に「発注情報」を閲覧し、対応可能な案件には即応募。同時に「見積時間24時間以内」の体制を築き、他社との差別化を図る。その努力の甲斐あって、半年間で4件の新規取引先を開拓する。現在でも継続的に続いているお客様がいるとのこと。

その後もネット受注に意欲的に取り組む。ある日「得意技術PR」に書き込みをした時のこと、一回線しかない電話回線が、ひっきりなしに送られてくる図面により使えなくなったと、苦笑いを浮かべる。「得意技術PR」は一時中断(笑)。

同社のホームページについて尋ねると、「ネットからの受注を期待するならば、ホームページがないと意味がないと思っています」と甲野さんは言う。福東製作所のホームページには、甲野さんの2つの強い思いが込められている。

まず1つは、「自社のローテクが生むメリットを最大限にPRし、受注を獲得する」こと。

同社の製品は、熟練した技術を誇る職人によって手がけられている。少人数だからこそ、お客様の要望にも臨機応変に対応ができ、短納期、低価格での提供が可能。これらをホームページ上に掲載する。

インターネットを通じて仕事を発注する多くのお客様は、急ぎの場合が多い。自社の強みを一方的に伝えるばかりではなく、お客様が求めるニーズを理解した上で、それを全面的にPRする。

そしてもう1つは、「社員の結束を生む」ことだ。ホームページを開設するにあたり、社員全員からアイディアを集めて中身を決めた。そうすることにより、一人一人がインターネットへの意識を持つことができ、ネット受注に対する社員の士気が高まった。

インターネットは、中小企業にとって限りない可能性を秘めたビジネスツールだと、甲野さんは言う。

「今朝も1件見積もりを出しました。決まりそうなんですよ!」この誠心誠意取り組む姿勢と、福東製作所の人柄を映し出すホームページが、発注者の心をつかんでいるのだと感じる。

私もその人柄に心奪われた一人として、今後も福東製作所を陰ながら応援したい。

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