第17話 挑戦

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「こら、おまえ、どさくさにまぎれてなにしやがる!」

菅沼がそれを引きはがす。

明希子は土門を振り仰いだ。

「いけますね」

ぼそりと彼が言った。

――なんだ、めったに口をきかないけど、いい声してるんじゃない。

そんなことを思っていた。

「でも、平面を凸凹にコア抜きする、となると、もうひとつサーボを入れることになるな」

夏目がふたたび難しい表情になっていた。

「喜ばせたり、がっかりさせたり。おう、夏目よ、いってえどっちなんだ? できるのか? できないのか?」

菅沼がせっつく。

「うーん……わざわざ回転コア用のサーボをこの型に付ける、そのスペースがあるかどうか……えーっと……」

ぶつぶつ言いながら夏目がまた椅子に座ると、眼のまえのノートに計算式を書き連ねはじめた。

みなでじっと彼を見つめていた。

しばらくして夏目がペンを置いた。

「ホームズ――」

声をかけると、明希子に向かって彼がうなずいた。

「だいじょうぶ。計算上は変更可能です」

「よっしゃー!」

明希子は握りこぶしを高々と上げた。

「しかし、肉抜きにねえ……そんなこと思いつきもしなかったなあ」

菅沼があっけにとられたように言った。

「現場慣れしてる我々には固定概念ができてしまってますからね」

と藤見。

すると菅沼が、

「固定概念か――ちげえねえや」

と、珍しく彼の意見に同意して、

「肉抜きにそんな手のこんだ細工するなんざ、なあ。コストのかかったぜいたくな金型になったもんだ」

菅沼が明希子に向かって、

「アッコさん、ここはひとつ、三洋自動車にどーんと請求しないといけませんね」

「それはだめ」

「なぜです?」

「この仕事は、あくまでうちがさいしょに提出した見積で請けたいの」

SPECIAL THANKS TO
株式会社みづほ合成工業所・後藤敏公社長

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